第百十一話 ページ14
───────あと、どれくらいだろうか。
数日後。
むいくんを探していると庭にその姿を見つけた。腕にはむいくんの鎹鴉、銀子が乗っている。
『むいくん、何してるの?』
「…A」
むいくんの側に寄ると、銀子がカアと鳴いた。
『銀子!久しぶり…』
「触ラナイデ!私ニ触ッテイイノハ無一郎ダケヨ!」
『痛っ』
触ろうとしたが、くちばしで手をつつかれた。銀子は嫉妬丸出しで、見るからに私を敵対視している。
「銀子」
むいくんが少し低い声で名を呼べば、銀子は拗ねた様に声を上げた。
『大丈夫だよ!銀子がむいくん大好きなのは知ってるし』
手も大丈夫だと、顔の前で振る。
『でも仲良くなれると思うんだけどな…。ほら、むいくん大好き同盟とか組んで』
「嫌ヨ!」
「ちょっと、何変な同盟作ろうとしてるの」
むいくんは私をジト目で見ながら、空いている手で頬を抓る。
ごめんと謝る私を暫く見つめてから、表情を柔らかくした。
「少し散歩しよう」
**
夜の散歩というのも風情がある。電灯や家屋から漏れる明かりが、暗闇に映えて綺麗だ。
歩くスピードが速くなり、浮き足立っているのが自分でも分かる。
「…嬉しそうだね」
『うん、楽しいから!』
最近はこんな風に散歩をする余裕すらなかった。鬼になったせいで私が活動出来るのが夜に限定され、むいくんと出かける機会を得る事も難しい。
鬼の出現が止んだ事で、むいくんにも少し時間の余裕が出来た。
つまり言いたいのは
『むいくんと一緒にいれて嬉しいの!』
むいくんと一緒なら何でも楽しい。
むいくんは目を瞬かせ、それから手を伸ばし私の腕を掴む。いきなりの事に間抜けな声が出た。
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作者名:憂流 | 作成日時:2021年1月31日 10時