境界線。参【時透無一郎】 (ページ2)

今日:8 hit、昨日:19 hit、合計:53,963 hit

第九十九話ページ2

その後、空が明るくなった頃にむいくん、そして炭治郎達が戻って来た。

皆、死なずに…上弦に勝ったのだ。

むいくんは帰って来た瞬間にまた倒れてしまった。泡を吹いたのに、無理して動いたせいだろう。

２日は眠っていたけど３日後にはほぼ全快。流石、柱である。

刀鍛冶の里は上弦２体の襲撃を受けたにも関わらず、被害は最小限に留められた。
だけど最小限とはいえ、犠牲になった人がいることも確か。

しっかりとした弔いはできずとも、生前愛用していたであろう刀を備えた簡素なお墓を作り供養した。

そしてその刀鍛冶の里はというと、すでに拠点を移しているようだ。
“空里”という、いざという時にすぐ移り住めるような里を作っているらしい。

そうしてまた、私達は前に進み出していた。

＊＊

「A、柱合会議に行ってくる」

『あ、うん』

しばらく休んでいたむいくんは、数日ぶりに隊服に身を包んでいた。柱合会議ではきっと痣の事について話すのだろう。そう考えていると、視線を感じ顔を上げる。淡い色の目が私を見下ろしていた。

『…むいくん？行かないの？』

「…もう知ってるよね、竈門禰豆子が太陽を克服した事」

それについて触れられるとは思わず少し驚いたけど、こくりと頷く。鬼殺隊の中では話題になっていた。私は漫画で知っていたけど、普通ならあり得ないこと。

「…Aもいつかそうなるのかな」

『え…？』

「……何でもない、じゃあ」

……変なむいくん。

行ってしまった彼を見送り首を傾げる。

でも何となく、むいくんが思っている事は分かった。

『(私が太陽を克服する事…ううん、人間に戻る事を…むいくんは望んでるんだよね)』

複雑な気分だ。

私も人間には戻りたい。

それでも…私は、全てが終わるまでその選択をしないのだ。