境界線。弐【時透無一郎】 (ページ50)

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第九十七話ページ50

「時透殿！！大丈夫ですか！！私にはもう何が何やら分かりませんでしたよ！」

「大丈夫大丈夫、すごく今気分が良いんだ。それにすぐ炭治郎たちのところへ行かないと」

だけど、そう言うむいくんはすごく顔色が悪い。

『ほんとに大丈夫？顔色悪いよ』

「全然大丈夫だってば、僕の話聞いてる？」

「んっ？何かハァハァして……体も震えていませんか！？ちょっと貴方…」

「いいから君は小鉄君の所へ行ってくれないか…」

「おえっ」

途中で言葉を切ったむいくんは、泡を吐いて倒れてしまった。

『む、むいくんー！？』

「うわぁぁあ！！時透殿ぉぉぉおっ！！」

突然の事に、私と鉄穴森さんはとにかく慌てた。

「やばいやばい死ぬのかな？何をすればいいんでしょう！？ちょっ…誰か！！」

このままじゃ泡が詰まってしまう。えっと…こういう時は…

「横向きにした方がいいですよ」

突然聞こえた第三者の声。振り向くと小鉄君が立っていた。

「うわー！！小鉄少年の亡霊！！」

「いや、全然死んでないので亡霊じゃないスよ」

「いやいや亡霊って自分で分からないものなんですよ死んでるのが！！」

鉄穴森さんが混乱して騒いでいる間、私は小鉄君に言われた通り、むいくんを横向きに頭を膝の上に乗せる。ふぅ、と息をついた時、小鉄君が懐に手を入れて何かを取り出した。

「新しい刀につけて欲しいって、炭治郎さんから預かっていた鍔です」

ーーーーー

ー無一郎視点ー

鍔…。

それを見て煉獄さんとの記憶が思い浮かんだ。自然と目に涙が滲む。

父さん…母さん。

''頑張ったなあ''

兄さん…。

『むいくん…』

…A…。

『むいくん、ありがとう。ありがとね…』

Aが一体何にお礼を言ったのかは分からない。

ただその時は、涙が溢れて止まらなかった。