12:羽織 ページ12
「っ……さむ……」
足元が寒くて目を覚ます。
拉麺の椀は片付けられており、食堂の電気は消えていた。
どれ程眠ってしまっていたのかは定かではないが、食堂がこの有り様ならば、もうじき日付が変わっている頃だろうか
盛大に溜め息を吐き出して体を起こせば、しゅるりと衣擦れの音がしたあと、ぱさりと何か軽いものが床に落ちた音が聞こえた
「羽織?……これ、」
見覚えのある派手な羽織。
これは、紛れもなく晋助の物だ。
「っ〜……もう!!」
広げっぱなしの資料をかき集めて、彼の羽織をシワになら無いように手早く畳み、椅子を仕舞って、晋助の部屋に向かった。
急ぐつもりも無かったし、なんならもう寝ているかもしれないけれど、それならそれで構わないと小走りで部屋の前につく。
ほんの少し弾む息を整えてから、私はできるだけいつも通りに襖を開いた
「……、テメェが許可無しに入ってくるなんざ珍しいなァ?……何かあったか?」
少し警戒したような瞳に、私は何も言わずに頭を横に振った。
三味線の調律をしていたらしい手を止めて、私の手元に視線をやる
「あぁ……丁度寒ィと思ってた」
「……窓、開けてるからでしょう」
「見ろ、満月だ」
窓の外にぷっかりと浮かぶ丸い月に視線を留める晋助の肩に羽織を掛ける。
開いた衿元を合わせて、その手から三味線を受け取る
「晋助」
ベン、ベン、と音を鳴らしながら弦の張りを調節する。
喉まで出かかっている言葉をハッキリと言葉にできない私は、晋助に負けず劣らずガキらしい
「体、冷やさないようにしてくださいよ」
ふっと口元に笑みを浮かべた晋助に三味線を手渡すと、月夜に相応しい、美しい音色が響き始めた
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姫華(プロフ) - とても面白いです!これからも更新頑張って下さい! (2019年6月8日 23時) (レス) id: c5633e9a43 (このIDを非表示/違反報告)
麦ちゃん - 本当に面白いです!これからも頑張ってください。応援しております! (2019年3月9日 17時) (レス) id: ad939e8b4e (このIDを非表示/違反報告)
千颯(プロフ) - ああぁぁぁ〜!おかん体質の夢主ちゃんすこ過ぎます〜!!更新頑張ってください! (2019年3月9日 1時) (レス) id: ee8ee87e1d (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃむーしゅ(プロフ) - とても面白いです!これからの展開が楽しみです。 (2019年3月2日 9時) (レス) id: d836fbb346 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:東雲出雲 | 作成日時:2019年3月2日 0時