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77:晩酌(H) ページ29

ふわりと鼻腔を擽った酒の匂いに釣られて縁側に出向けば、珍しい背中を見つけた




「大祝」

「あ、副長」


盃を手にしたまま振り返った大祝は、白いシャツに帯付き、と、変わった格好をしていた。

まるで書生のようだと思いながら隣に腰を下ろす



「酒は呑めねぇのかと思ってたが」

「呑めない、と言うより呑まないようにしてました」

「……ま、未成年だしな」



大祝にはそんな概念は無いはずだが、少し悪戯っぽく笑みを浮かべて見せた。



「副長もいかがです?」

「…注いでくれ」



慣れた手付きに、経験があるのかと聞けば、すんなりと頷く。

少しばかり欠けた月を肴に、一気に酒を煽った


「こっちにゃ慣れたか」

「ええ」

「そうか」


随分と現代人っぽくなった口調に思わず笑みが溢れる

頼む前に注がれる酒に、歪んだ月が映り込んでいた


「日々が目まぐるしく過ぎ去って行く……まるで"アイツ"が望む世を見せられているようです」

「アイツ?」



ぽろりと零れ出た言葉を拾えば、酒が入っているからか、何時もより饒舌な大祝が月を見上げた



「友人……いや、上司?……いや、違うか……何と言うんでしょうか、んー」


考えながら、大祝は見たことのないくらい優しげな表情を浮かべた。

それは、脳裏に浮かべた人物が、耐えがたいほど大切なのだと雄弁に語るようだ



「……好いてんのか」


俺の言葉にきょとんと目を丸くしてから、首をかしげる


「好いて……いや、それはないですね。……うん、ないない」


多分、酔っているのだろう。

無意識に持ち上げられた口角に、こいつが其ほどまでに思う男が、どんな野郎なのか気になり、俺は質問を投げ掛ける。



「どんな……私の友は、ヤツの事を"全身革命家"と言っていました」

「はぁ?」

「元々上士の出で、そのまま何事もなく過ごしていれば藩の重役に出世できたものを、"つまらん"とか言って無下にするような馬鹿なんです」



語りながら、その表情には、何処か寂しげなものが見え隠れする



「…、喧嘩でもしたのか」

「……まぁ、そう、とも言えるのかもしれませんね」


歯切れの悪い言葉に眉を寄せると、大祝は緩い笑みを見せた



「私、彼の恩人を殺しまして」









78:盃→←76:友



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みぃ(プロフ) - コメント失礼します!こちらの作品がとても大好きでいつも楽しく読んでます。更新頑張ってください。応援してます (2019年5月31日 19時) (レス) id: d77d134be6 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - れもんさん» 楽しみにしてます!私の考えなのですが、伊東さんは、もしかしたら愛情が欲しかったのかな?と思いました。 (2019年2月19日 23時) (レス) id: f0c523c988 (このIDを非表示/違反報告)
れもん(プロフ) - 虎さん» お返事遅くなり申し訳ありません。コメントありがとうございます!!伊東さん…確かに頭が良くて何と無く怖い印象があるのわかります…でも生い立ちもラストも切なくて……。真選組動乱編終了までもう少しですので楽しんでいただけるよう頑張ります! (2019年2月18日 23時) (レス) id: af4b9b062a (このIDを非表示/違反報告)
- 面白いです!私は伊東さんっていつ見ても少し怖い印象を持っています。 (2019年2月17日 20時) (レス) id: f0c523c988 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:東雲出雲 | 作成日時:2019年2月13日 0時

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