73:呼び止める(S) ページ25
酒やらつまみやら。
無茶苦茶なまま雑魚寝する人間の間を縫い、そっと部屋を出ようと襖を開いた
「お?」
くん、とコートが引かれ、何かと思えば頭を垂れたAが弱々しく裾を掴んでいた
「さかもと、……行く、な」
「A……?」
思わずしゃがみこんで顔を覗き込む。
白い頬に指を触れてみれば、すべすべとしていて柔らかい。
「おまんとわしはどっかで会うた事があるんか?」
帰ってくるのは寝息だけ。
大きく溜め息を吐き出して、わしはAの体を横抱きにする。
思っていたよりもしっかりと重みのある体だが、本人の言う通り、女であると言う丸みと柔らかさを感じる
「済まんのーA。騙すつもりじゃないんぜよ」
Aの部屋の畳にAをそっと降ろし、彼女の荷物を改める
丁寧に保管されている書類をめくって、自分の懐から取り出した紙切れと照らし合わせる。
幾つか対応する名前を見つけ、わしは元あったように荷物を整える
「さかも、」
寂しげな声に、思わず手を止めてAを振り返る
「さかも、と、」
ゆらりと細い手が宙に伸ばされる
「A?」
無意識にその手を握りしめれば、Aは何処か安心したかのような微笑みを口元に浮かべ、再び穏やかな寝息をたて始めた
「……こりゃ参ったのー……」
固く握られた手を見詰めながら、小さく溜め息を吐き出した
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みぃ(プロフ) - コメント失礼します!こちらの作品がとても大好きでいつも楽しく読んでます。更新頑張ってください。応援してます (2019年5月31日 19時) (レス) id: d77d134be6 (このIDを非表示/違反報告)
虎(プロフ) - れもんさん» 楽しみにしてます!私の考えなのですが、伊東さんは、もしかしたら愛情が欲しかったのかな?と思いました。 (2019年2月19日 23時) (レス) id: f0c523c988 (このIDを非表示/違反報告)
れもん(プロフ) - 虎さん» お返事遅くなり申し訳ありません。コメントありがとうございます!!伊東さん…確かに頭が良くて何と無く怖い印象があるのわかります…でも生い立ちもラストも切なくて……。真選組動乱編終了までもう少しですので楽しんでいただけるよう頑張ります! (2019年2月18日 23時) (レス) id: af4b9b062a (このIDを非表示/違反報告)
虎 - 面白いです!私は伊東さんっていつ見ても少し怖い印象を持っています。 (2019年2月17日 20時) (レス) id: f0c523c988 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:東雲出雲 | 作成日時:2019年2月13日 0時