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51:伊東鴨太郎 ページ3

「ああ、Aちゃん、急に呼んでごめんね」



局長室に足を踏み入れると、見覚えの無い男と、相変わらず柔らかな笑みを浮かべる局長が座っていた。

薄い硝子の向こうの怜悧な瞳が私を見留、緩く細められた

何と無く居心地の悪さを感じ、私は男から視線を外した



「……いえ、遅くなって申し訳ございません」


勧められた座布団に腰を下ろすと、局長は頭を下げる私に嬉しそうに笑った



「そう固くならなくて良いってば。
実はAちゃんに紹介しとかなきゃならない人が居てね、此方は───」
「自分で名乗りますよ、近藤さん」


男が、眼鏡の柄をくい、と持ち上げた


「伊東鴨太郎だ。よろしく頼む」


柔和に微笑んだ男の名前に聞き覚えがあり、私は思わず局長の顔を見た。

ニコニコと笑みを浮かべた局長が確りと首肯く。

変わらず柔和に笑む伊東に視線を向ける


「大祝と申します。
伊東殿がいらっしゃらない間に書物を拝借致しておりました。遅くなりましたが、御礼を」


深く頭を下げると、伊東は小さく笑い声を漏らした


「ふふ、話に聞いた通り、随分と確りした娘さんだ。近藤さん、本当に彼女を貸していただいても?」

「ええ、彼女は非常に優秀ですからね。
Aちゃんも、先生に着いて色々学ぶと良い」

「先生、ですか」


局長の言葉に思わず眉をしかめるが、局長はそう気にしてはいないらしい。


「ああ、真選組の参謀を請け負ってくださって居てな」

「そうだ、Aさんにも新しい刀を。随分と年季の入ったものを使っているようだ、好きなものを選ぶと良い。どれも一流の鍛冶職人の──」
「有難い申し出で御座いますが、生憎この刀は手離すつもりは有りません故」



そう断ると、伊東の目の奥がスッと冷えた。

この目は──知っている。
ある特定の人間が、他人を、敵だと見なした目だ

すぐに口元に笑みを浮かべた伊東が取り繕うかのように口を開いた



「……そうか、いや、それなら構わない。僕の部屋は知っているね?……明日の朝からで良い、江戸を軽く案内してくれるかい?」

「畏まりました」



頭を下げた私に、対照的な視線が注がれていた。







52:案内→←50:外出禁止



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みぃ(プロフ) - コメント失礼します!こちらの作品がとても大好きでいつも楽しく読んでます。更新頑張ってください。応援してます (2019年5月31日 19時) (レス) id: d77d134be6 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - れもんさん» 楽しみにしてます!私の考えなのですが、伊東さんは、もしかしたら愛情が欲しかったのかな?と思いました。 (2019年2月19日 23時) (レス) id: f0c523c988 (このIDを非表示/違反報告)
れもん(プロフ) - 虎さん» お返事遅くなり申し訳ありません。コメントありがとうございます!!伊東さん…確かに頭が良くて何と無く怖い印象があるのわかります…でも生い立ちもラストも切なくて……。真選組動乱編終了までもう少しですので楽しんでいただけるよう頑張ります! (2019年2月18日 23時) (レス) id: af4b9b062a (このIDを非表示/違反報告)
- 面白いです!私は伊東さんっていつ見ても少し怖い印象を持っています。 (2019年2月17日 20時) (レス) id: f0c523c988 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:東雲出雲 | 作成日時:2019年2月13日 0時

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