50:外出禁止 ページ2
「お前は暫く外に出るな」
祭りの後、副長にそう言い渡された私は、溜まっていた書類仕事を終わらせ、縁側に足を放り出していた。
随分薄くなったが、まだ首にはアイツの痕が残っていて、鏡を見る度に底知れぬ罪悪感に苛まれる。
そっと首の痕に触れてから、ふと思い出して、私は自らの文箱を開けた。
そこには、2度め、高杉に会ったとき、中村から渡された手紙がキチンと仕舞われていた
なぜ今まで忘れていたのかと思いだし、封を切り中を改めた。
中身は、私の想像していたものとは違った。
『拝啓 中沢 A殿
御元気にしておられますでしょうか?此方は、貴女が居なくなってからと言うもの、いつになく空気が強張っております。
桂殿も高杉殿も代わらず何を考えていらっしゃるか分かりませんし、久坂も久坂で京を焼くなどと申しております。
私のような凡夫共には彼等の思想も思考も正直理解できぬところに有るのです。
しかし──然し此のまま事が進んでしまっては、どうしようもなく、取り返しの付かない事になるのではと言う気がして成りません。
この手紙を、中村に託したのはその為です。
どうか、貴女の御力を御貸しください
敬具 山田 慎太郎』
震えた下手な字で書かれた手紙は、急いで書いたらしく、掠れたり潰れたりと実に読みにくいものだった。
「おい、大祝」
「わっ!?お、沖田さん」
思わず手紙を閉じると、沖田さんはあからさまに疑わしい視線を向ける
「何でィ見られちゃいけねェもんでも?」
「そう言う訳では……ただの手紙ですよ」
「ヘェ?……ま、良いでさァ。近藤さんがアンタを呼んでるぜィ」
「局長が?」
「さっさとしろィ。待たせんじゃねェぞ」
げし、と私の太股を軽く蹴ると、沖田さんはそのまま廊下を歩いていってしまった
外出禁止が言い渡されて、結局、沖田さんへのお礼の品はまだ買えていない。
私は少しばかり乱れた袴を整えて、早足に局長の元へと向かった
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みぃ(プロフ) - コメント失礼します!こちらの作品がとても大好きでいつも楽しく読んでます。更新頑張ってください。応援してます (2019年5月31日 19時) (レス) id: d77d134be6 (このIDを非表示/違反報告)
虎(プロフ) - れもんさん» 楽しみにしてます!私の考えなのですが、伊東さんは、もしかしたら愛情が欲しかったのかな?と思いました。 (2019年2月19日 23時) (レス) id: f0c523c988 (このIDを非表示/違反報告)
れもん(プロフ) - 虎さん» お返事遅くなり申し訳ありません。コメントありがとうございます!!伊東さん…確かに頭が良くて何と無く怖い印象があるのわかります…でも生い立ちもラストも切なくて……。真選組動乱編終了までもう少しですので楽しんでいただけるよう頑張ります! (2019年2月18日 23時) (レス) id: af4b9b062a (このIDを非表示/違反報告)
虎 - 面白いです!私は伊東さんっていつ見ても少し怖い印象を持っています。 (2019年2月17日 20時) (レス) id: f0c523c988 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:東雲出雲 | 作成日時:2019年2月13日 0時