35:トラウマ ページ36
キィンと金属音が響き、無意識に体が強張る。
「俺の獲物に手ェ出すたァ躾がなってねぇな」
背筋に冷水が浴びせられたように身動きがとれない私に、愉しげな深緑が向けられる。
「っ、晋助」
「……高杉」
「よぉヅラ……んで、A……だったか」
緩やかに持ち上げられた口角に、ハッとして後ずさる。
高杉の刀を脇差しで受けた中村が冷や汗を垂らした
「こいつは俺の獲物だ。貴様に渡す訳にはいかん」
「あ?……知るかよ。コイツは俺が目ェつけた。テメェは後だ。邪魔するようなら斬るぜ」
ギラリとした瞳が中村を睨み付けた。
脇差しを収めた中村は、私の事を鋭く睨み付けると、穴の空いたベッドに一通の手紙を叩き付けた
「……中沢。裏切り者に、居場所があると思うな」
病室を去っていった中村の足音が聞こえなくなると、高杉は刀を鞘に収めた
「ヅラ、テメェの女か」
「女だと?こいつは真選組の新入りだぞ、女な訳があるか」
目を細めると、高杉はベッドを回り込み、私の浴衣の胸ぐらを掴んだ
抵抗しなくてはならないと頭で理解しつつも、固まった身体は言うことを聞かない。
「っ!何を、いっ、」
「なっ!高杉貴様っ!!」
胸ぐらを捕まれたそのまま、背後の桂のベッドへと押し倒され、片足でベッドに乗り上げた高杉が、襟を両側に開き、白のシャツをたくしあげた
「おいおい……此の何処が男だ?」
「、き、さまっ!!」
漸く繰り出した右の拳も、高杉の手に易々と捕まる
「ククッ、気の強ェ女は嫌いじゃねェ。なぁ、A?」
香の香りが鼻孔を擽った。
外気に触れている肌が冷たい。
現実を受け入れられていない私の意識の端に、鈍色が映った
「離れろ、高杉」
桂が突きつけた切っ先に、高杉は余裕そうに喉で笑った
「じゃあな、また会おうぜ……A」
あっさりと離れていった高杉に、暫く動けずに居ると、桂が刀を収めた音にハッとして、佇まいを直しその場から離れた
「……すまない、その、女子だとは思わなんだ…」
「いや、剣を嗜む以上よくあることですから、お気になさらず」
気まずい空気の中、ゆっくりと夜が明けていった
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れもん(プロフ) - 月歌さん» ご指摘ありがとうございます!ただいま確認、訂正致しました。対応が遅くなってしまい申し訳ありません。これからもどうぞ宜しくお願い致します (2019年2月18日 23時) (レス) id: af4b9b062a (このIDを非表示/違反報告)
月歌(プロフ) - コメント失礼します!この話すごく好きです!あ、あと、43話の総悟のセリフ、「〜ますァ」より、「〜まさァ」の方が総悟らしさが出ると思いますよ…!余計だったらすいません<(_ _)>これからも応援してます! (2019年2月7日 1時) (レス) id: 6a57b5564a (このIDを非表示/違反報告)
れもん(プロフ) - 橋本さん» ありがとうございます!文才と学だなんて……嬉しすぎます…!稚拙な文章ですが、これからも楽しんでいただけるように頑張ります! (2019年2月6日 23時) (レス) id: af4b9b062a (このIDを非表示/違反報告)
橋本(プロフ) - 文才と学の多さに圧倒されました……すきです。ふとしたときの表現だったり言葉で本当に知識のある方なんだなぁと思いました。続き楽しみにしてます、更新頑張ってください! (2019年2月4日 23時) (レス) id: cee43a9737 (このIDを非表示/違反報告)
れもん(プロフ) - (о´∀`о)さん» コメントありがとうございます!ゆっくりですができるだけ更新していきたいと思っております! (2019年2月4日 7時) (レス) id: af4b9b062a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:東雲出雲 | 作成日時:2019年1月28日 16時