31:高杉晋助 ページ32
「っく、う、ぁ……!」
腹部が焼けるように熱い。
破裂音の後に襲った痛みに、思わず膝をついた
「晋助様!此方は片付いたッス!」
赤い着物を身に纏った女に、髷を結った男。
晋助様と呼ばれた男は、刀についた私の血を払うと舌を打った
「そうかィ。ちと逃がしちまったが、まぁ良い」
鋭さを増した深緑の瞳が私を見下ろした。
強い。
半端じゃなく強い。
震えそうな足に力を込め、血でぬるつく手でしっかりと刀を握る
「ヘェ、まだ立つか」
愉しげな声音が私を苛つかせていた。
3対1。そのうち一人は、見た事もない飛び道具を使う。
───勝算はない。
「晋助様ぁ……何スかコイツ、真選組ッスか?」
「らしいな」
ず、と足袋がささくれた畳に擦れた
「手ェ出すなよ。来島、武市」
キィン!!
金属同士が擦れる甲高い音の後に、腹を衝撃が襲った
「晋助様!!」
後ろに吹き飛ばされ、グツグツと煮えたぎっていた鍋がひっくり返った
「チッ」
舌打ちの主は腹に突き立てられた短刀を抜き、床に投げ捨てた。
その隙を見逃す筈もなく、再び床を蹴り飛んだ刃が交わり、金属音を響かせる
つばぜり合いの最中に振るった踵が高杉の腹を捉え、好機とばかりに私は刀を─────
「っ、……ぁ、ぐ……」
ずるり、と、体の中の音が聞こえた気がした。
荒い息を整えながら、高杉は私の腹を抉った刀を鞘に収め、ククッと、喉を鳴らした
「晋助殿、真選組が」
「あァ……おい、テメェ生きてんだろ」
サイレンの音に混じり、高杉がそう話しかける
冷たい指先が私の顎を掬い上げると、変わらずギラついた瞳が細められた
「名前は」
「貴様に、名乗る、名、など、」
言い切る前に、高杉は舌打ち、投げ棄てるように顔を固定していた手を離した
「……まぁ良い。……また会おうぜ」
サイレンの音が遠くなり、ふつり、と、意識が途切れた
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れもん(プロフ) - 月歌さん» ご指摘ありがとうございます!ただいま確認、訂正致しました。対応が遅くなってしまい申し訳ありません。これからもどうぞ宜しくお願い致します (2019年2月18日 23時) (レス) id: af4b9b062a (このIDを非表示/違反報告)
月歌(プロフ) - コメント失礼します!この話すごく好きです!あ、あと、43話の総悟のセリフ、「〜ますァ」より、「〜まさァ」の方が総悟らしさが出ると思いますよ…!余計だったらすいません<(_ _)>これからも応援してます! (2019年2月7日 1時) (レス) id: 6a57b5564a (このIDを非表示/違反報告)
れもん(プロフ) - 橋本さん» ありがとうございます!文才と学だなんて……嬉しすぎます…!稚拙な文章ですが、これからも楽しんでいただけるように頑張ります! (2019年2月6日 23時) (レス) id: af4b9b062a (このIDを非表示/違反報告)
橋本(プロフ) - 文才と学の多さに圧倒されました……すきです。ふとしたときの表現だったり言葉で本当に知識のある方なんだなぁと思いました。続き楽しみにしてます、更新頑張ってください! (2019年2月4日 23時) (レス) id: cee43a9737 (このIDを非表示/違反報告)
れもん(プロフ) - (о´∀`о)さん» コメントありがとうございます!ゆっくりですができるだけ更新していきたいと思っております! (2019年2月4日 7時) (レス) id: af4b9b062a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:東雲出雲 | 作成日時:2019年1月28日 16時