えぇ、ホンモノの吸血鬼ですが？② (ページ9)

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9.シーザー・ツェペリページ9

「ちょっと、離しなさいよ！！」

放っておけない。

シーザーは黒いローブを被った女の左腕を掴んだまま、何も言わずに夜道を歩いた

なんとなく、彼女の顔を見た時に、放っておいてはいけないと思ったのだ

「聞いているの！？離しなさいと言って───」

ばたん、路地裏の仮住まいに女を押し込んで、シーザーは息を吐いた

「すまない、乱暴だった」

扉に背中をつけると、女は不機嫌そうな表情を隠そうともせず、眉を寄せてシーザーを見ていた

「なんなのよいきなり……」

ちらりとローブから赤い光が漏れて、シーザーはゴクリと唾を飲んだ。

明らかに普通ではない、その腕を女はローブの奥に隠す。
じろじろと見られて気持ちの良いものではないだろう。
シーザーは視線を女の瞳に向けた

「その、すまない。何だか……放っておいてはいけないような気がして。

俺はシーザー。シーザー・ツェペリだ」

名乗ったシーザーに、女は不機嫌そうな視線を向ける

「放っておいてはいけないような女が居ると、イタリアの男はいきなり家に押し込めるわけ？」

トゲのある言葉に、シーザーは頭を掻いた

「あー……本当に済まないと思ってる」

しゅんと眉を下げたシーザーに、Aは盛大に溜め息を吐いた

顔を隠すローブを払い落とし、部屋に備えられた古い椅子に腰掛けた

「……Aよ。A・ソレイユ。シーザーとか言ったわね。丁度良いわ、この近くに教会があるでしょう」

さらりとした銀髪が波打ち、白い肌に、いやと言うほど存在を主張する血を固めたような赤い瞳に、シーザーは言葉に詰まった

「え、あ、ああ、確かにあるが……あそこにはもう随分長い間誰も住んでないぞ。
手入れをして居る爺さんは見たことがあるが……」

何もないところだぞ？
シーザーの言葉に、Aはふっと息を吐くように笑った

「……構わないわ。私をそこまで案内しなさい」

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