えぇ、ホンモノの吸血鬼ですが？② (ページ8)

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8.イタリアページ8

「イタリア……良い町ね」

細い月を見上げて、Aは一人、ひっそりと微笑んだ

夜も深まってきているが、この町には人の姿がぽつり、ぽつりと見えた

身なりの……悪く言えば薄汚い者達ばかりで、美しい町並みも、一歩裏側へ足を踏み入れれば、目も当てられないようなごみ溜めが広がっていた

万が一を警戒して、Aは黒いローブを深く被った

この国に来たのは、ある目的のためだった

「……にしても、時間がかかりそうね、手懸かりと言うものがあまりにも…」

うんざりしたような顔で、Aは左手で銀髪を髪にかけた

───もう試すことは粗方試した

聖人とやらの血を吸ってみたりだとか、聖水を浴びてみたりだとか、銀の杭で心臓を貫いてみたりだとか。

身体は欠けるし、身を焼くような苦しさもある。

けれど死なない。
どこまでも、化け物で、不死身だった

治りかけの右腕が、月の光に反射してぎらりと光った

「──お嬢さん？こんな時間に一人かい？」

背後から声をかけられ、Aはサッと腕を隠す

「ええ……。貴方こそ、こんな時間にこんなところで一人かしら？」

「いや、俺は今から帰るところで……、最近は吸血鬼騒ぎがあるから、あまり外を出歩かない方がいい」

「吸血鬼騒ぎ？」

ハッと顔をあげて、男の姿を見た
美しい金髪の男が、Aをじっと見詰めていた

「ああ、知らないのか？……まぁ、騒ぎになってるのは隣町だが……？失礼、」

一歩、Aに近づいた男が、素早い動きでAの右腕を掴んだ

「怪我を、……え？」

目を丸くした男に、Aはしまった、と内心で舌を打った

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