えぇ、ホンモノの吸血鬼ですが？② (ページ3)

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3.体温ページ3

「体が冷えるぞ」

ふわりと暖かい毛布が肩に掛けられて、Aは声の方を振り向いた

「あら、帰っていたの？」

真っ白になった頭髪のスピードワゴンが、呆れたように暖炉に火を灯した

「暖炉もつけずに……」

「雪が降っているからよ」

太ももに積もった雪を払ってAは部屋へ入り、窓を閉めた

仕事が忙しいと言って滅多に帰ってこなくなったスピードワゴンの帰還を、Aは内心で喜んでいた

自分には必要のない毛布を、ソファーに座るスピードワゴンの膝にかけて、作り置きをしていたシチューを火にかける

「普通は、雪が降ってりゃ寒くて家に引きこもるんだがな」

「イギリスの冬は良いものよ。
昼間だって、堂々と外を歩けるんだもの」

分厚い雲に遮られて、太陽は顔を出さない。

Aは昼間に外に出て、食品や毛糸を買った

夜には窓のサッシに腰を下ろして、ただただ降り積もる雪を眺めながら編み物をした

「そんなこと言って、この前右手をやられたのはどこの誰だったかね」

くっくっと笑うスピードワゴンに、Aは頬を膨らませた。

「んもう、小言が多いわよ！」

そう、時々たまーに、顔を出した太陽に、腕や足を持っていかれることがあった。

けれどAにとってそんなことはたいした問題ではなかった。

「こんなに冷えて……」

スピードワゴンがAのむき出しの肩に触れた

まるで氷、いや───死人のように冷たいAに触れて、悲しそうな顔をする

「……私は、元々冷たいわよ」

ふい、と顔を背け、肩に触れるスピードワゴンの手をパチリと叩き落とした

ハリのない、シワだらけの、老人の手だった

「おい、何をそんなに……」

「うるさいわ」

ぴしゃりと言い放つAに、スピードワゴンは何も言わず、やはり悲しそうな顔をして、ソファーに戻っていった

Aには、それが腹立たしくて仕方がなかった。

そして、いつまでも変わらない姿である自分を思っては、ひどく悲しい気分になった

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