えぇ、ホンモノの吸血鬼ですが？② (ページ18)

今日:3 hit、昨日:2 hit、合計:15,553 hit

18.柱の男ページ18

「……柱の男……ね」

ため息混じりに呟かれた言葉に、スピードワゴンは僅かに目を細めた。
幾重にもカーテンをひいた室内で、ワイングラスを揺らすAは、彼らの語る未知の敵へ思いを馳せる。

「生態系の頂点ということは、吸血鬼ですら食糧にしてしまうのかしら」

その言葉に眉をひくつかせたのはスピードワゴンだけでなくシーザーもだった。

「A、それは……」

くすりと笑ったAはスピードワゴンの弛んだ頬を引っ張りながら「不細工な面をしないでちょうだい」とグラスを煽る。
とろりとした粘性の液体は、Aの瑞々しい唇を朱に染めながら口内の粘膜へ吸収されていく。

「ん？それワイン？」

冷たい舌で唇を舐めたAは、ジョセフの質問に目を丸くしたあと、軽くグラスを揺らして、そうねと微笑みを浮かべた。
スピードワゴンが手配したこの飲み物は、吸血鬼たるAの主食──血液だ。
輸血用にパック詰めされたそれは、しかし人間の体内から取り入れるものよりずっと劣化したものである。

「まぁ、似たようなものよ」

ふーん？と疑わしげな目を向けるジョセフが一口ちょうだいと言い出す前にAは残りの液体を一気に飲み干してしまった。

その内にシーザーとジョセフがトランプゲームを始めると言い出し、スピードワゴンのとがめるような視線から逃げるように、部屋の隅をぼんやりと眺めることにした。

・