えぇ、ホンモノの吸血鬼ですが？② (ページ15)

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15.死体ページ15

彼女はいったい誰なのか

どうしてこんな所に安置されているのか

それもこんなに美しい状態で。

聞きたいことは山ほどあった

けれど、聞けなかった。

帰り道を歩くAは、フードを深く被り、握り締めた拳を震えさせていた

なにも話すな、なにも聞くなと言われている気がして、俺はAの一歩後ろを黙って歩いていた

やがて家の前に付くと、Aは黙って踵を返した

「A？どうしたんだ、」

思わず手首をつかんで引き留めた

そのときの俺は、たぶん、ひどく情けない顔をしていたと思う

ローブの奥から覗いたその瞳に、Aが、吸血鬼だったということを思い出した

背筋がまるごと氷柱になったかのようで、なんなら逃げ出したいと言うのに、体はその場から一ミリたりとも動かなかった

肺が痺れたように、息をするのだって一苦労だ。

「っ……A、」

「離しなさい」

声に、腕を掴む手に力が入る。

何だって言うんだ。
やるなら、きちっと演じきれよ。

どうしてそんな、苦しそうな声で、俺を拒絶しようとするんだ

「……離さない」

「っ、私は吸血鬼よ、貴方ごとき殺すことなんて」

「出来ない！」

びくり、とAの体が震えた

泣きそうな顔で、でも唇を噛み締めて涙が溢れてしまわないようにと我慢しているのがわかった

「出来ないさ、君には俺を殺せない」

やがて、ぽろりと大粒の涙が、灰色の石畳に落ちた
堰を切ったようにぼろぼろと流れ出る涙が、細い月に照らされて。

怒られるかもしれないと思いながら、そっとAを抱き締めてみれば、冷たい体は呆気なく俺の腕の中に収まった

子供のように泣きじゃくるAが、泣きつかれて眠ってしまった頃。

ちょうど太陽が登り始め、俺は急いでAを家の中へと押し込めた

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