108:喧嘩両成敗 ページ10
「ふふ、傑作だな」
「桂さん」
去っていった晋作を笑ったのは、縁側から顔を出した桂さんだった。
草履を突っ掛けて庭におりてきた桂さんに、私は刀を鞘に納めて会釈する
「二人は喧嘩をするのは初めてだったか」
涼しげな目元で私を見ると、やはり桂さんはいつも通り優しく笑みを浮かべる。
「……はい、やっぱり晋作は私の事……いや、そうですよね、先生を助けられなかった私が…」
「いや、Aさん、それは違うな」
「いえ、違くなんてありません。私が自分の力を過信したせいで、先生は…」
「参ったな……二人とも頑固だ」
ふむ、と考え込むように顎を撫でる桂さん。
同時に、副長の言葉が思い出されて胸が痛くなる
「やはり私は、ここから消えた方が良いでしょうね」
晋作からしてみれば、私の顔などもう二度と見たくはなかっただろう。
かといって、人斬りの私が、この日本でまともな生活が出来るとは思えない。
それに、もし、あそこへ帰ることができたとしても、私にはもう、居場所は……
さぁ、っと、ぬるい風が髪を拐った。
今さら、途方も無い孤独感に襲われて、震えそうなほど怖い。
「Aさん、居場所は自分で作らなくてはならないよ。いつでも逃げていては、いつか居場所が無くなってしまう」
「"逃げの小五郎"が、逃げるなと仰るんですか」
「その通り。漸くAさんの人間らしい所を見られたんだ、折角なら守りたいだろう?」
暗くなった視界を取り払うように前髪を脇に避けた桂さんの指が私に上を向かせた。
「桂さん……」
「高杉さんならそう遠くには行っていないはずだ。気を付けて行ってきなさい」
・
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みぃ(プロフ) - 続編おめでとうございます!これからの展開がすごっく楽しみです!これからも頑張ってください。 (2019年8月13日 23時) (レス) id: d77d134be6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:東雲出雲 | 作成日時:2019年8月12日 14時