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「目覚めたようだな」
思いの外スッキリとした目覚めに、低い男の声が聞こえた。
どうやら私はへまをしたらしい。
拘束具で丁寧に縛り上げられている上に、この場所に数人の気配を感じていた
「…………随分と変わった格好だな、ここは仮装パーティー会場か?」
胴の真ん中を開けっ広げにし、頭巾を被った人相の悪い男にそういってやれば、男は表情を一切動かさずに手元の書類に目を落とした
「それだけ話せればもう大丈夫だろう。自分の名前はわかるか」
「人に名前を聞くならまず自分からだ。イタリア男ならそのくらい弁えておかなくちゃあやってけないだろう?」
言うと、男は鋭く私を睨み付けた。
「勘違いをするな。俺はアンタの名前を知っている。
名前だけじゃあない、アンタの事は何でも知っている。何でも、だ
これは確認だ。アンタの脳ミソがまともに働いているかどうかのな
どうだ?名前は思い出したか?」
「……ペルラだ」
「偽名だな」
男は仕舞ってあったらしい椅子を持ち出し、腰かけた
「エリック」
「シャロット」
「フリック」
「ジェニー」
あらゆる名前に、しかし男は反応しなかった
「……ああわかったよ。Aだ」
「年はいくつだ」
「23」
「車のナンバーは」
「毎月変えてた」
「……これで最後だ。君の、愛犬の名は」
そう言われた瞬間、私の脳裏に、ある光景が浮かんだ
「メタリカ!」
なんだそれは?
言葉の代わりに、私が吐き出したのは鋭い刃を持ったカミソリの付け替え刃だった
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作者名:東雲出雲 | 作成日時:2018年7月1日 15時