2019年7月24日 ページ23
「あっ、一色姉妹だ」
梅雨明け間もない7月24日、水曜夜の特別番組。 近頃は娘のエミと過ごして1日が終わる真理恵を見かねて、大家の典子と節子と一緒に夕食を囲んだ。 猛暑もあり、真理恵は外出一つを取っても大きな苦労なのだ。
「マリエちゃんの知り合い？」
「高校の同級生です、多分。 テレビで観るとは思わなかったけど…」
題して『モノクロの世界に生まれて』。 生まれながらの全色盲──現在は1色覚と呼ぶ──である姉妹の35年間を取材したとあるテレビ局が、お蔵入りになる度めげずに取材し続けた成果を、二人の35回目の誕生日直前に放送できることになった。
その姉妹のうち、先に生まれた娘の名はゆかり、後に生まれた娘の名はかおり、共に1984年7月29日生まれの34歳。 あと5日で35歳の誕生日を迎える。
二人が生まれたのは鹿児島県鹿児島市。 国立大学附属幼稚園から附属小学校に進学したものの3年終了後に引っ越し、島根県出雲市内の公立小学校に編入した。 二人が小学校4年生に上がった1994年は色覚検査が義務として行われた最後の年で、二人はそこで知ったという。
「考えてみれば、私ら知らんこと多すぎたよね」
「うんうん、色もそうだけど、どっちがお姉ちゃんでどっちが妹かも言われるまで考えたことなかった」
そこから二人は出雲市内の公立中学校に入学したが、将来を心配して元々趣味だった音楽で進学しようと考えた。 だが、地元に音楽科を設置している高校は無い。
音楽に未練を残しながら、一度は普通科の受験も考えたが、黒板を読むことさえままならない私たちに学科試験は無理。 二人は遠方であることを承知して、行ったこともない神奈川の高校を志願した。
「あんとき、お父ちゃんがえらい反対して」
「島根より東に出たの、中学の修学旅行だったしねー。 京都より東は、高校に上がった時」
二人のインタビューを挟みながら進むドキュメンタリー。 一番古い映像は2003年、姉妹と真理恵が大学へ進学した頃に始まる。 音楽科に在籍していたとはいえ、最終的に一般大学の理系学部に進んだ真理恵とは違い、二人は仲良く令嬢揃う女子大の音楽学部を卒業した。
「初めてこっちに来たときはー、毎日お祭りみたいやなって思った」。 そう語るのは大学生のゆかり。 対して当時のかおりは「ビルが多い」という印象を抱いたとか。 双生の姉妹といえど、ものの見方も伝える言葉も異なっている。
To Be Continued...
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