2016年9月13日 ページ33
とあるマンションでは、客人と隣室の住人が夕食の下拵えをしていた。
「名雲さんのお兄さん…と、ゆりこちゃん?」
「あ、奥さんお帰りなさい。 今日は一人なんですけど、うっかり夕飯を作りすぎちゃって」
いつの間にか冷蔵庫の中にタッパーに詰められたポテトサラダが置いてあった。 柾とは初対面のはずなのに妙に馴染んでいると思った。
「他の3人は?」
「留学準備と結婚準備と進学準備だそうで」
結婚準備は相手があっちゃんなんで是非来てくださいよーと、何故か招待された。 間違っても百合子の結婚式ではない。
「あっちゃんって…接骨院の?」
「はい。 15歳差です」
「度胸あるわね」
「名雲君と奥さんは何歳差なんですか?」
それはここで言うべきことだろうか。 仮にもその”名雲君”の兄の目の前だぞ──と真理恵は腹の中で思った。 幸い彼は気を利かせて「夕食の支度はやっておきます」などと言ってくれたので聞こえていないと信じたいが、ここで言うべきことではないだろう。
「えーと、9歳か10歳?」
「まさかのアラフォー…じゃなくてオーバーフォーティーですか!? アラフィフ?」
百合子の姉は真理恵の同級生だったので、ここで示されたオーバーフォーティーはこの場にいない方である。 実際はアラサーの真理恵に対して”名雲君”の兄が彼女の1〜2歳年下なのだが。
「そう見える?」
「いえ、見えないです。 まりえさんの2〜3歳上にしか見えない」
「…あのね、名雲さんはあなたと同い年だから」
「えっ?」
結局その日は柾と百合子と真理恵という部屋の契約主を抜いた組み合わせで夕食を食べた。 人当たりの良さからか、普段のような神妙な空気に満たされることはなく、実家の団欒にも似ている気がした。
尚、契約主は百合子が部屋に帰った後に帰宅したという。
THE END
『客人と居候と隣人と』
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名雲君と呼んでいる割にすっとぼけている百合子ちゃん。 柾氏と何を話していたのでしょうか。
留学準備は沙彩子ちゃん(某音大の器楽科)、
結婚準備は麻理奈ちゃん(某美大の洋画専攻)、
進学準備は美鈴ちゃん(GMARCHの情報系の学部)です。
暇人の百合子ちゃん(名雲と同じ大学の文学部)は単位を取って、12月〜3月までに提出する卒論を書けば公務員になります。
本当は真理恵の出身大学をはじめ、特定の大学をイメージしていますが都合で伏せています。
2016年10月10日→←2016年9月11日・四【130】
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