2016年5月21日 ページ23
20日の夕飯に、ワインを飲んでしまったのが悪かった。 男女二人組のうち、女の方がレストランで酔いつぶれたのだ。
ホテル本館のレストランは修学旅行客でごった返っており、二人は市街地の別のレストランで食事を取ったのだ。 そこのレストランのウェイトレスがこう言った。
「お客さま、年代物のロゼ・ダンジューはいかがですか?」
しかも通常の半分の値段で飲めるという。 二人とも黙っていなかったのだが、ここまでレンタカーで来ているので運転手がいなくなるという事態は避けたい。 ここで名雲はあっさり辞退した。
「じゃあ頂きます」
元来、食いしん坊でアルコールが大好きな真理恵である。 一歩間違えたら依存症へまっしぐら…といったところだが、その辺りはきちんと弁えているらしい。
「名雲さんは?」
「僕が飲んだらホテルに戻れなくなりますよ」
「あ、そっか。 こんなに美味しいのに…」
グラス2杯を飲み干した彼女の目は、明らかに目が据わっていた。 ここで名雲は異変に気づくべきであったのだろうが、まだ若く酒豪の兄以外の酒の席に立ち会ったことのない彼は見逃していた。
「じゃあ、持って帰ればいいんだ」
「止めなさい」
普段は良識ある真理恵が「ワインを持ち帰る」などという非常識的なことを口走った時点で、誰が見ても酔っていた。 だが、ここではまだほろ酔いだったのだろう。
「味はどうです?」
「とっても」
「とても?」
暫くすると、会話が成り立たなくなっていた。 食事の進みは通常通りだが、飲み物の進みは通常の3倍、いや300倍だ。 ちなみに名雲も食事は既に片付けていた。
「眠い…」
「何だって?」
名雲は知らなかったのだ。 ただの酔っ払いと面倒臭い酔っ払いの違いを。 ただの酔っ払いなら多少放っておいてもどうにかなるのだが、面倒臭い酔っ払いは放っておくとお縄につく。 そして現在の真理恵は、面倒臭い酔っ払いだ。
仕方がないので、彼は真理恵の肩を担いでレストランを後にした。
時刻は午前0時30分過ぎ。 何故か寝間着を持ってきていない酔っ払いに備え付けの女物の浴衣を着せてベッドに寝かせてから、名雲はずっとパソコンに向かっていた。 ちなみに、酔っ払いは現在ノーブラ、ノーパンである。 それらを着替えさせたのも当然彼だが、深い事情があるのだ。
せめてもの救いは、同じホテルに泊まっているあの4人組に何も勘づかれていないこと。
「あつーい…」
To Be Continued...
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