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「僕と１日デートしてください。Aさん」
デート、そして共同戦線。
思わぬ言葉に固まっていると、涼しい顔をしたまま安室さんは続けた。
「アナタにはやらなければならない仕事がある。そして僕にも。僕らが一緒に行動すればどちらの仕事も成立します」
私の仕事は、依頼人の娘さんを守る事。
『あなたの、仕事って……？』
「それは秘密です」
この男……！
私ばかりがベラベラと本当の事をしゃべらされ、どう考えても不平等だ。
『ずるい……』
「フッ。少しくらい謎がある方が面白いでしょう？」
少しですって？冗談も大概にして欲しい。
「さぁ、そんなに焦らさないでください。僕、意外とせっかちなんですよ？……そろそろ返事を頂けませんか？」
取られた右手の指先を、彼の指でスルリと撫でられ、思わず身体を硬直させる。
「アナタが選べるのは２つの内どちらかです。依頼人を護衛しつつ僕と共に遊園地を回るか……」
再び私の手を撫でる指は、今度は手の甲の方まで上ってくる。
抵抗もできずただそれに動揺していると、次の瞬間、スッと手の下に置いていたそれを抜かれた。
『ッ……！！！』
見事に彼によって引き抜かれたそれは、それは、間違いなく私のスマートフォンだ。
「それとも今すぐ、僕に捕まりますか？」
私の切り札はたった今、彼によって奪われてしまった。
『前者で、お願いします……』
「いいお返事が頂けて嬉しいです」
整った顔に、とびきり綺麗な――裏のある黒い笑みを向けられ、顔が引き攣る。
そんな私にもお構いなしで、もう一度私の手を取り、人の指を使って勝手にスマホのロックを解除すると、サラサラと操作してスマホを寄こしてきた。
「ありがとうございました」
『どういたしまして』
皮肉交じりにそう返答して項垂れる。
彼と互角に渡り合えるかも知れないなんて少しでも考えていた自分が情けない。
記憶力しか取り柄のない私が、彼に勝てるはずなんて無かったのだ。
「これからデートだと言うのに、そんなに暗い顔をされるのはショックですね」
なんて、全くショックなんて受けていないだろう笑顔で言われても返答のしようが無い。
「さぁ。行こうか、A」
急に親しげに名前を呼ばれ、顔を上げれば、まっすぐ伸ばされた手。
『っは、……い』
それに応えて、まさか自分から手を伸ばしてしまうなんて。
自分は、考えているよりずっと、イケメンに弱いらしい。
続く (更新停止中)
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作者名：うし | 作成日時：2019年4月23日 2時
