・〜茅野side〜 ページ10
・
夕陽が差し込む教室
最後の日まで座っていた自分の席に腰を下ろして、教卓に置かれた先生の写真を見る
目を閉じれば、あの10日間のことが鮮明に思い出されて
そのときと比べると、すっかりこの校舎も綺麗になった
「…先生。
あの事件で、世の中が大きく変わったなんてことは、全然無くて…
まるで何も無かったように、みんな相変わらず忙しなく生きてて、
…でも、これだけはどうしても言いたくて」
頭の中で流れる記憶は、今となっては自分の人生における財産のようなもの
1日目から最後まで
自分で見て、聞いて、感じたこと全て
「あの10日間は…
私にとって青春でした」
先生から色んなことを教わって、学んで、考えるようになって。
だから、私やクラスのみんなに届いたように
誰かに伝わって欲しい。
先生の思いが…誰かに
「あとね、先生。
私、結構本気で先生とAちゃんのコンビ推してたんですよ？」
今日、この場にAちゃんだけが居なかった
その理由は何となく分かる
最後の日。
屋上で、先生が縋る子供みたいに涙をポロポロと流していたとき
本当に呟くような、2人にしか聞こえない声で喋ってた会話
あれがきっと、今日居ない理由の答えなんだろう
どんな内容かは分からないけど
連絡しようとしても、他の人みんな連絡先を知らなくて
この三回忌のときに来れたら来てと誘えたのは、先生の埋葬の頃だった
その後のことは、誰も知らない
…Aちゃんが、ちゃんと先生に救われたのか
私達が何か力になれてあげられたかは本人しか分からない
でも、それで
Aちゃんが少しでも幸せなら
それで良いかな、なんて思ってしまう
「もし……もし仮に、先生がAちゃんと会ったら、
こっちの喉が焼けるくらい愛してあげて下さいよ？
でもその前に振り向いてもらえると良いですね。
って、Aちゃんが死んだみたいに言っちゃいましたけど…
実際はどうなんですか？」
自分の発言に思わず笑いが溢れた
結局のところ、Aちゃんのことをちゃんと知って、分かってるのは澪奈と先生くらいだ
彼女に今まで何があって、どういう結果になったのか郡司さんに聞いても、口止めされたと言って黙秘した
それが私の知る限りのAちゃんらしくて
あのとき、ほんの少しだけ笑ったのはここだけの話
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 595人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おひな(プロフ) - 感動しました。ありがとうございました。 (1月9日 23時) (
レス) @page44 id: fb3fd917e6 (このIDを非表示/違反報告)
玲生(プロフ) - 私こんな綺麗に泣いたことないかもってぐらいすーって涙ながれた (8月14日 22時) (レス) @page44 id: 7f34fd14ff (このIDを非表示/違反報告)
ケロッピ(プロフ) - ありがとうございました (8月6日 1時) (レス) id: fb652d6333 (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - 柊先生の生存ルートも書いてほしいです (2021年3月19日 16時) (レス) id: b4ba18a803 (このIDを非表示/違反報告)
蒼炎 - え、え？最終更新日が…？また更新されるのですか？期待しても良いのでしょうか？笑 (2021年1月18日 23時) (レス) id: 76abfc2842 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もちもち | 作成日時：2019年5月14日 23時
