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握った手は、異様なまでに熱が籠っていた


風邪を引いたときのような熱さ…





「ははっ」



『?』



「お前の手、冷たいなぁ…」





握られた範囲の中で、先生は手を開いては閉じてを繰り返しながら笑った


まるで感じる温度や握る感覚が、嬉しいというように






かと思えば


さっき起きたばかりだというのに、先生は眠そうにゆっくりと瞬きをした





「まだ、握っててくれよ…?」



『…分かりました』



「俺、案外怖がりみたいだから…」



『じゃあ、尚更ですね』





少しだけ今よりも強く手を握ってあげると


ゆるっと口角を上げて、鼻から抜けるように、ふふふっと笑う




こんな先生、中々見れないだろう






…あ、見れないで思い出した



先生起きたから、一応担当医呼ぶべきだったかな


でも、また目を瞑りそうだしなぁ…





『…先生、眠そうですよ」



「うん…眠い……」





そう言っては、徐々に瞼を下ろし始める




フニャっと眠そうに微笑んでいるけど


その目は確かに、熱を帯びていた





何か、愛おしいものを見るような…


そんな感じの熱





『…柊、一颯さん……』



「…」





名前を呼べば、一度閉じかけた目は大きく開かれて


言われた言葉を咀嚼して飲み込んだ先生は、全ての力が緩んだように顔を崩して笑う





「やっと、呼んでくれた…」



『そ、う…でしたか?』



「うん…そうだよ……」





クリスマスプレゼントを貰った子供のように顔を綻ばせる中で


何処か泣きそうなようにも見えた






その理由は、何となくだけど分かってしまう



今までの先生の言動を振り返れば…





『…大丈夫です、怖くありません。

ただ少し、休むだけです』



「…お前の、大丈夫は…何度も聞いたよ……」



『ずっと、手を繋いでますから』





ただただ、先生が……


苦しくならないようにと必死だった







口から出てくるなだめる言葉は全て


何処かにある月並みのもの






それしか知らなかった


でもその中でやるしなかった






なのに先生の顔は


あんなに嬉しそうだったのに、今では少し顔を歪ませてポロポロと涙を流す





「嫌だ、なぁ…っ」





それでも、笑っていた








…一般的には、お世辞にも綺麗とは言えないだろうけど





「死にたく、ない…っなぁ…」





私には、その光景が



今までの、何よりも綺麗で、眩しくて…







絵画のようだと、思ってしまった






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設定タグ:3年A組 , 柊一颯 , 菅田将暉
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おひな(プロフ) - 感動しました。ありがとうございました。 (1月9日 23時) (レス) @page44 id: fb3fd917e6 (このIDを非表示/違反報告)
玲生(プロフ) - 私こんな綺麗に泣いたことないかもってぐらいすーって涙ながれた (8月14日 22時) (レス) @page44 id: 7f34fd14ff (このIDを非表示/違反報告)
ケロッピ(プロフ) - ありがとうございました (8月6日 1時) (レス) id: fb652d6333 (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - 柊先生の生存ルートも書いてほしいです (2021年3月19日 16時) (レス) id: b4ba18a803 (このIDを非表示/違反報告)
蒼炎 - え、え?最終更新日が…?また更新されるのですか?期待しても良いのでしょうか?笑 (2021年1月18日 23時) (レス) id: 76abfc2842 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もちもち | 作成日時:2019年5月14日 23時

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