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・〜柊side〜 ページ32







夜中


大体の人が寝てる時間帯に、ふと目が覚めた




…何でこの時間に起きたんだ


暫く寝れないぞ、これ




そう思いながらAが寝る簡易ベッドに目をやる





電気は点けてないから窓の外からの光だけを頼りにシルエットを捉える


ベッドの上で、上体を起こしているような人影…





『っ、…あ、先生…起きるには、まだ早いですよ……』





俺が声を掛けるよりも先に、Aが言葉を発した



ただ、その話し方は息切れしているようだった





その違和感に、徐々に意識が覚醒する





「A…?」



『…ッハ、ァ…』





途切れ途切れに不規則な呼吸をして


その息は小さく、荒い




よく見れば、起こしていた上半身は


自分を抱え込むように丸まっていた





それを視界で捉えて、状況がわかった瞬間


飛び起きるようにベッドから出て、Aに近付く




丸まった背中に手をやれば



肩がビクッと揺れる





そしてその背中は熱帯びていて


呼吸を整えるみたいに、上下に大きく動いていた





『だい、じょーぶ…ですから……』



「何処がだよ」





思わず口からそんな言葉が出た



これの何処をどう見て大丈夫だと言い張るのか…


もしこれが大丈夫だという奴がいたら、そいつの顔を拝んでみたいものだ




そして本人も、この状態が大丈夫じゃないと分かっているのか、口籠る





『せんせ、寝ないと…体に、障ります……』



「お前の方が大事」





いつもやってもらってるように背中を優しく摩る






…弱ってる人間の背中を摩る時って、こんな気持ちになるのか




物凄く、己の無力さを感じる






前よりは細さは目立たなくなって、健康体だというのに



今摩っている背中は





ひどく、細くて



消えてしまうんじゃないかって思ってしまう





『…先生…ど、うしよう』



「ん?」





あ、敬語が抜けた





『薬が、効かない…
寝たいのに、眠れない…

でも、寝たら……怒られる』





そう言って、何かから耐えるように布団を握った



この暗さに慣れた目は、はっきりとAを捉える






敬語が抜けて、少しだけ弱く放たれる言葉や、その声色は






まるで、悪い夢を見た子供みたいで



それに怯える子供みたいで





未だに丸まっている背中は



自分を守っているように見えて









胸の奥が、苦しかった




滅多に見せない子供らしさと、今何も出来ない自分に






泣きたくなった






・〜柊side〜→←・



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おひな(プロフ) - 感動しました。ありがとうございました。 (1月9日 23時) (レス) @page44 id: fb3fd917e6 (このIDを非表示/違反報告)
玲生(プロフ) - 私こんな綺麗に泣いたことないかもってぐらいすーって涙ながれた (8月14日 22時) (レス) @page44 id: 7f34fd14ff (このIDを非表示/違反報告)
ケロッピ(プロフ) - ありがとうございました (8月6日 1時) (レス) id: fb652d6333 (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - 柊先生の生存ルートも書いてほしいです (2021年3月19日 16時) (レス) id: b4ba18a803 (このIDを非表示/違反報告)
蒼炎 - え、え?最終更新日が…?また更新されるのですか?期待しても良いのでしょうか?笑 (2021年1月18日 23時) (レス) id: 76abfc2842 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もちもち | 作成日時:2019年5月14日 23時

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