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意識なんてものは、割と曖昧だった




最後に聞こえた “またね” と言う声と、ドアの閉まる音が耳に入り


足音が遠くなったとき




意識がちゃんと現実にあるような気がした





「…大丈夫、じゃないな」



『はは…』





緊張感というか、緊迫感というか…



張り詰めていた気が一気に緩み、とんでもない疲労感がドッと溢れる




余韻がまだ残ってるから、心臓の動きが異様に速い


大きく脈打ってるのが何もしなくても分かる





水中で長い間息を止めた後に、空気を体内に取り込むときに似ている




今にも息が切れそうで、大きな溜め息を吐きそうになるけど、どうにかしてそれを飲み込んだ






ふと、手に目をやると



先生の手に包まれていた




その温度は温かく、優しい何かを感じて


肩の力が抜けるような、安堵出来るようなものだった




そんな先生の顔を見てみると、眉を下げて少しだけ憂苦の色を見せる


でも微かに怒ったようにも見えた





「自分で自分を、傷付けるな…」



『…え、』





ほんの僅かな怒りの色を見てしまったから、もっと強く何かしらを言われると思っていた



けど先生が発した言葉は、少し弱く


ポツリと呟くようなものだった




だから、予想外のことに思わず声に出た





「お前にとって、少し怖かったかもしれないけど、

だからと言ってそれを耐えるために、我慢するために、自分に爪を立てるのは辞めろ」



『え…やって、ました?』



「うん。
手の甲に爪の痕が付いてる」





そう言って先生は、親指の腹で手の甲を優しく撫でた




…全然、気が付かなかった


そもそも、担当医の前でまともに喋れていたかも分かってないから、自分の行動なんて記憶に無かった


多分、無意識だ




自分の中でそう思っていると、先生の指の動きが止まり、両手をギュッと握られる



顔を上げると、真剣な眼差しがこちらを貫く





「だから、そうする前に俺の手を握ってよ。

どれだけ強くても大丈夫だから。


我慢するな。なんて言っても、お前の中で消化出来ないのは理解してる。

でももし、何かが怖くて必死に耐えようとする時は、俺の手を握って。


その方が、ずっと良い」





な?と言って首を傾げ、少し微笑む


無意識の内の行為だから、自分では分からない





でも、諭されるように柔らかく、優しく言われると頷く以外の選択肢は無くて


気付いたら、僅かに頷いていた






・〜柊side〜→←・〜柊side〜



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おひな(プロフ) - 感動しました。ありがとうございました。 (1月9日 23時) (レス) @page44 id: fb3fd917e6 (このIDを非表示/違反報告)
玲生(プロフ) - 私こんな綺麗に泣いたことないかもってぐらいすーって涙ながれた (8月14日 22時) (レス) @page44 id: 7f34fd14ff (このIDを非表示/違反報告)
ケロッピ(プロフ) - ありがとうございました (8月6日 1時) (レス) id: fb652d6333 (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - 柊先生の生存ルートも書いてほしいです (2021年3月19日 16時) (レス) id: b4ba18a803 (このIDを非表示/違反報告)
蒼炎 - え、え?最終更新日が…?また更新されるのですか?期待しても良いのでしょうか?笑 (2021年1月18日 23時) (レス) id: 76abfc2842 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もちもち | 作成日時:2019年5月14日 23時

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