【3年A組】杭は出なきゃ打たれないはず 2【今から皆さんは人質です】 (ページ5)

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なんとなく向かった方向は塞がれた通路の方、

瓦礫の方だった。

気付いたら壁に体を預け、廊下の端で足を抱えて座り込んでいた。

教室に背を向けてるから、多分少しでもあの場所から距離を離したかったのかもしれない

…宇佐美さんと茅野さんってトイレに入ってったんだよね

見つかったら変な目で見られるんだろうな

でも今は立ち上がる気力が無いというか、なんというか…

さっきより幾分かすっきりはしたけど

それが完全かと言われたらそうではない

あとちょっとしたら復活するんだろうけど、

こりゃだめだなぁ…

「床冷たいだろ」

私の直ぐ後ろで声がした

振り向かなくても分かる

『…監視カメラって、便利ですねぇ』

「お陰で異変に気付けるから助かるよ」

そう言って私の目の前に来て、しゃがんで顔を覗き込んできた

ほら、先生だ

「…お前、本当に高校生か？
酷い顔してるぞ」

『…どんな顔ですか』

「残業終わりのサラリーマン」

『ハハッ、…疲れてはないんですけどね。

…うん、大丈夫です』

そう言ってみせれば、先生は少しの間を作って、そっか。と言って立ち上がった

そして目の前に手が差し出される

差し出された意味は分かる。

ただ、その手を取って良いものか…

先生の手を見つめていたらその手が伸びてきて、私の手を掴んで引っ張った

体は上に、前に動いて

思わず転びそうになったけど、ぐっと踏ん張ってそれを堪えた

少しだけ先生が残念そうな声色を出していたけど

きっと、気のせいだ

「教室に居たくないなら、こっちに来るか？」

『…いえ、大丈夫です』

「そうか、そりゃ残念だ」

『……』

先生がついに口にした

…気のせいだと思ってたかったのになぁ

立ち上がったのは良いものの、手は一向に離されなくて先生の顔を見た

その目は真剣なんだけど、何処か不機嫌そうだった

心当たりは全く無い

「…お前、真壁と仲良かったんだな」

『茅野さんもそんな目線を送ってましたけど…
そう見えますか？』

「普段のお前からするとな。

真壁とあんなに喋るとか俺知らないんだけど…」

先生は少し不満げに手をギュッと握るけど

それこそ知らない

でも不思議なことに

先生と喋ってたら肺に煙が溜まったような感覚が完全に消えた

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