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「何で俺がこいつより弱えぇんだよ!!
可笑しいだろ…何でだよっ
こんなやつに負けっかよ、こんなやつに…!」
里見くんが真壁に向けてるのはきっと、憎さと悔しさ。
どれだけ里見くんが強く言っても真壁は静かに
受け止めるように見てるだけだ
今も、里見くんの目をじっと見ている
その目は言葉を受け止めながらも何かを訴える目だった
「何なんだよ…
何だよその目は!何なんだよ!!」
「真壁くんは弱くなんかないよ」
茅野さんが冷静に、且つ鋭く、芯の通った声で、
それでいて里見くんの気持ちを落ち着かせるような声で言った
そして茅野さんは喋り出す
「澪奈が言ってた__…」
“_私、翔の選手生命を奪っちゃったの…_”
“_でもね、だからこそ翔の分まで努力して
1分1秒でも速くゴールするんだ_”
“_それが、私の出来ること。
私に出来る、彼に対する私なりの償い方_”
その言葉は、茅野さんと言われた言葉は違えどニュアンスは全く一緒だった
確か、真壁がマネージャーになった後に言われた。
…そっか、茅野さんにも言ってたのか
妙にスッキリした顔してたと思えば、先に喋った人が居たのか
宣言して、努力して…
景山ってカッコいいね。
「…澪奈がそう思えたのは、きっと!
悲しみや苦しみを乗り越えた見たからだと思う!」
そのことを聞いた里見くんと真壁は
目に涙を浮かべていて
「何だよっ、…」
里見くんは、震えた声で言って真壁から手を離した
自白するように口を開く
「知ってたよっ…
こいつが…、真壁が俺より強えぇって…
取り返しのつかないことをしたって…
そんなん知ってたよっ!」
彼の声色と表情から滲み出るのは悔しさと後悔だった
周りの誰一人、口を挟むことなくそれを静かに聞いて、見ていた
「…殴ってくれよ……
殴れよっ、…おいっ、殴ってくれよっ…」
「…景山は、きっとそんなこと望んじゃいないよ。
この悲しみを、力に変えてくれ里見…!
景山の分まで……」
今、きっと里見くんの中で何かが変わった
真壁も、変わった…
後ろでそれを見ていた先生は少し目を潤ませて教卓に戻った
だけど、その時の顔付きは一変して
冷たいものだった
「…刑事さん、今、僕が語ったことはあくまで理想論です。
でも、現実はそんなに甘くない」
そう言って先生が向けるのは
真っ黒な、拳銃…
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作者名:もちもち | 作成日時:2019年3月28日 0時