detective WEST Ⅱ (ページ17)

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赤「純さんの部屋から見つかった診断書です」

目の前に差し出された診断書の、筋萎縮性側索硬化症の文字に目を落とした蘭さんは、信じられないとでも言うような戸惑いの色を強く浮かべる。

赤「ALSと呼ばれる病気です。聞き覚えはありますか？」

シゲの質問に蘭さんは首を振る。その目には薄らと涙の膜が張っていた。

赤「僕たちも調べた範囲のことしか分かりませんが……次第に筋肉が痩せていき体が動かなくなる病気みたいです。喋ることも食べることも、呼吸さえも難しくなる」

シゲはそこで一旦言葉を切った。
静まり返った事務所に、蘭さんの泣き声のような息遣いの音が響く。

「……純が死んだのは、私のため、でしょうか。」

赤「本当のことは純さんにしか分かりませんが、この病気は根本的な治療法がありません。あまり自分を責めないでください」

蘭さんの目からこぼれ落ちた涙が頬を伝って膝の上で力無く震える手に落ちた。
蘭さんから、悲しみと不甲斐なさ、そして純さんへの思いが伝わって俺まで泣きそうになる。

「先日は純のことを疑うようなことを言いましたけど、本当は愛されていた自信があったんです。やっぱり私は間違ってなかった。……それが分かって良かった。純に愛された時間を誇りに思えます。」

ありがとうございました。そう言って蘭さんは深々と頭を下げた。
きっとすぐには受け入れ難い事実やと思うけど、帰り際彼女は、これでようやく前を向けそうだと俺たちに笑って見せた。