05. 私の気持ち ページ5
彼の秘密を知ってからも
いつも通りの日常が過ぎていく。
ただひとつ、私の中の小さな変化を除けば。
私は、あれから彼と同じバスになるたび
胸が痛むようになった。
私が降りるふたつ前、ボタンが押されアナウンスが流れる。
つぎ、止まります。
止まらないでほしい、行かないでほしい。
私の願いは誰にも届かず彼はバスを降りてあのお屋敷へ向かう。
その後ろ姿はすぐに消えて見えなくなる。
彼の秘密を知ってから、
私は彼とバスが一緒になると喜んでいた自分がいたことに気づいた。
彼がいるバスは、私にとって特別だった。
いつも私の後ろの席に座ってくるあの人。
会話を交わしたことなんてないのに、
彼は私のことに気づいてさえいないのに、
同じ空間にいれることに幸せを感じていた。
そして今は彼と同じバスになるたび悲しんでる自分がいる。
完璧な天使に見えた彼には
誰にも言えない秘密があって
それを知った私は
きっと、彼のことが好きなんだと
ずっと好きだったんだと
気づいてしまった。
彼の弱い部分を、秘密を
ぎゅっと抱きしめてあげたかった。
あの悲しそうな笑顔を
もう見たくない。
きっと、私に助けて欲しかったんだよね
同じバスに乗っている私に。
彼の秘密は、私を恋心に気づかせ
私を特別だと勘違いさせていた。
私の日常が、崩れていく。
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桜田 - とても美しく儚いお話で途中切ない気持ちになりました。上手く伝えられないのですが、こんなに素敵な作品に出会ったのは久しぶりでした。ありがとうございました。次回作があるのならとても楽しみです。 (2017年4月8日 22時) (
レス) id: 85932e2b1a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：youun | 作成日時：2017年3月23日 22時
