04. 君との秘密 ページ4
バスの彼女とたまたま図書委員がかぶった。
なんでこんなに一緒になるんだろう。
彼女の名前はAっていうらしい。
当番表で初めて知ったその名は、彼女にぴったりだった。
｢人、来ないな｣
あまりにも暇なので呟くと
｢…そうだね｣
少し間を置いて返事が返ってきた。
｢図書委員ふたりもいらないじゃーん、ね｣
Aはそうだねって感じでうなずく。
そんなに会話を交わしたわけではないのに
Aの純粋さが伝わってきて
俺はなんだか惨めになってきた。
羨ましいなあ。
ふと、視線を感じてAの方を見ると
ちょうど俺のことを見ていたみたいで
目が合った。
君には俺がどんな風に写っているんだろう
そんなことを考えていると、
｢たまに帰りのバス、一緒だよね？｣
Aが唐突に聞いてくる。
俺は少し驚いて、気づいてないふりをした。
Aが少し悲しそうに見えたのは気のせいだろうか。
｢そ、そうだよ！
私のふたつ前で降りるから覚えてたの
でもジョンハンくんって電車じゃないの？
あそこって知り合いのお家？｣
俺の名前知ってるんだ。
まあそうだよね、俺、有名人だし。
｢ああ、あそこバイト先
あと名前、呼び捨てでいいよ｣
俺が笑いかける度、Aの頬は色づく。
｢あのお屋敷ってお店なんだ？
ずっと家かと思ってた｣
｢家だよ、金持ちの家
俺さ、あの家の人に買われてるんだよね｣
まるで普通のことのように発した
買われている、という言葉を
Aは理解できてないようだった。
ここでやめておけばよかった。
なのに、俺は
｢いわゆる売春、てきな
あ、これふたりの秘密ね｣
Aに俺の秘密を共有したんだ。
｢じゃ、おれもう帰るわ
後はよろしくね｣
そう言ってAを置いて図書室を出た俺は
明日から避けられるかなとか
気持ち悪がられるかなーとか
そんなことを考えていた。
本当は、誰かに言ってしまったかったんだと思う。
俺は汚いんだってことを
自分に自信がもてないからってこんなことをする最低なやつなんだってことを
君とは、違うんだってことを。
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桜田 - とても美しく儚いお話で途中切ない気持ちになりました。上手く伝えられないのですが、こんなに素敵な作品に出会ったのは久しぶりでした。ありがとうございました。次回作があるのならとても楽しみです。 (2017年4月8日 22時) (
レス) id: 85932e2b1a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：youun | 作成日時：2017年3月23日 22時
