13. 消えない飛行機雲 ページ13
全てといっても、私が好きだった人の名前と共有した秘密の内容は伏せて話した。
私が好きだった人は、私だけに秘密を教えてくれたということ
そしてそれは私にとって彼を好きだと気づかせるきっかけだったということ
秘密を打ち明ける彼はとても弱く、私はその姿を抱きしめてしまいたかったということ
そして、私はそんな彼を助けたくて
彼を引き止めたくて
｢彼は、私に自分のこと大切にしよろって言ってくれたの｣
優しい顔でうなずいてくれるジスくんになら
なんでも話してしまう自分がいて
それは私でも止めることはできなかった。
｢彼の笑顔はいつも悲しげで、きっと私に助けてほしいんだなって、自惚れてたの
彼の秘密を知ってる私は特別なんだって思って、彼を助けたくて、
私の気持ちを伝えることが、その時にできる私の全てだった｣
あなたのことを好きな人がいるんです
だから、自信をもって笑いかけて
あなたは魅力で溢れた人だから
そう伝えたかった
私には彼が必要なんだと、気づいてほしかった
｢だけど…｣
｢彼は、拒否したんだ？Aの気持ちを｣
言葉に詰まるとジスくんが続きを繋いでくれた。
うん、と消えてしまいそうな声を出す。
不意に自転車を押すジスくんの足が止まる。
｢もったいない｣
彼は俯きながらぼそり、と呟いた。
顔がよく見えない。
｢え？｣
意味がわからなくて私が聞き返すと、彼は顔を上げて私を見つめながら
｢こんなに綺麗な気持ちを持つ人に好きになってもらえているのに、
そいつはもったいないことしたね｣
少し困ったように笑う彼の言葉に、私はどこか救われたような気がした。
それから駅まではほとんど会話がなかったが、心地よい静けさに包まれていて決して重いものではなかった。
誰にも話したことのない私の秘密をジスくんに共有したからかもしれない。
ジョンハンくんも、こんな気持ちになったのだろうか。
ふと空を見上げると、空に飛行機雲がひとつ。
明日は久しぶりのバスになりそうだ。
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桜田 - とても美しく儚いお話で途中切ない気持ちになりました。上手く伝えられないのですが、こんなに素敵な作品に出会ったのは久しぶりでした。ありがとうございました。次回作があるのならとても楽しみです。 (2017年4月8日 22時) (
レス) id: 85932e2b1a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：youun | 作成日時：2017年3月23日 22時
