12. 逃げた気持ち ページ12
あれから私はバスに乗るのをやめて、学校まで自転車で通学することにした。
もともと駅までそんなに遠くなかったので、親も定期代が浮くと賛成してくれたのだ。
自転車通学にした理由は告白して振られて気まづいから、というのもあるが
私はそれ以上に彼と同じバスに乗るのが辛くてたまらなかった。
私の気持ちを伝えても、彼を助けることはできなかった。
見てるだけの自分が、何もできない自分が嫌いで、私は彼から逃げた。
｢明日は雨かもしれないね｣
涙ぶくろで目が消えてしまいそうなくらい目を細めて笑うジスくん。
彼とはもともと同じクラスだったのだが、自転車通学になってから
よく帰る時間が重なり、ふたりで駅まで帰るようになり仲良くなった。
｢雨かあ、雨嫌いだなあ｣
｢なんで？｣
ニコニコしながら自転車を押すジスくん。
ジスくんはいつもニコニコしている。
｢雨の日のバス、嫌いなんだよね
なんか、空気がこもってて重いっていうか｣
嘘つき。
本当はバスで彼と会うかもしれないから
私のものでもないのに、彼を引き止めたくなるから。
｢僕も雨は嫌いだなあ
だって、Aとこうやって帰れないしね｣
さらっと相手を喜ばせることを言ってしまうのは、きっと無意識なんだろうな。
｢Aってさ、好きな人とかいないの？｣
あまりにも唐突すぎる質問に驚いて顔を上げると、そこにはニコニコ顔のジスくん。
ジスくんはたまに何を考えているのかわからなくてちょっと怖い。
細められた目は奥の感情が隠れて見えなくて、冗談で返すべきなのか悩んでいると
｢いるの？いないの？｣
いつもより低めのトーンで聞くジスくんはいつものニコニコ顔ではなくて
見つめてくる目は真っ直ぐで、嘘をついても見透かされそうで
私は今までのことを全てジスくんに話した。
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桜田 - とても美しく儚いお話で途中切ない気持ちになりました。上手く伝えられないのですが、こんなに素敵な作品に出会ったのは久しぶりでした。ありがとうございました。次回作があるのならとても楽しみです。 (2017年4月8日 22時) (
レス) id: 85932e2b1a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：youun | 作成日時：2017年3月23日 22時
