11. 俺には、 ページ11
｢今日もかよ｣
行き場のない独り言を言いながら
俺は通話ボタンを押して電話を耳に当てる。
｢ハニちゃ〜ん？
今日も暇でしょ、来てよ寂しいの｣
寂しさなんて感じさせないような口調で
あの人は俺を誘う。
｢今から行きますよ｣
俺はそう言うと素っ気なく電話を切りながら
ちょうど止まっていたバスに乗り込む。
そして、いつもの席に座った。
前にいるAの背中は心なしかいつもより強ばって見えた。
いつものようにバスを降りると、後ろから人が来る気配を感じた。
振り返るとそこには、急いで降りるAの姿。
どうして、ここに
状況を飲み込めてない俺にAはさらに衝撃的な言葉をぶつけた。
｢ジョンハンくん、行かないで
私、ジョンハンくんのことが好き｣
好き？俺のことが？
Aは俺がしてることをわかってて言ってるのだろうか
ていうか、まだくん付けなんだな
｢ジョンハンくん、自分のこと汚いって言ってたけど、私にとってはそんなこと思えるジョンハンくんは綺麗だし
ジョンハンくんが汚いと思ってるところでさえも私は大好きだから、｣
Aが俺に伝えようとしている気持ちや言葉はどれも美しくて
俺にはもったいないものばかりだ。
次の言葉を探すAの目はとても綺麗で
その目に映る俺は、汚くてもいいのだろうか。
でもAなら、こんな俺を受け入れてくれる。
少しでも綺麗な人と寄り添っていれば、俺も少しは綺麗に、変われるだろうか
ゆらゆらと揺らいでいた俺を携帯電話の振動がいつもの場所に戻した。
だめだ、なに甘えてるんだよ
あの人の指輪で着飾った手を思い出す
あの手を、俺は、受け入れてしまっているんだ
終わらさないと
｢ごめん
俺、お前が思ってるより汚いよ｣
自分でも驚くほど冷たく言い放った言葉は
もう回収することも消すこともできない。
携帯電話を耳に当てながら俺はAに背を向けた。
ごめん、じゃなくて、ありがとうって言うべきだったかな。
ていうか、お前が綺麗すぎるんだよ
俺にはもったいなすぎるくらいに
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桜田 - とても美しく儚いお話で途中切ない気持ちになりました。上手く伝えられないのですが、こんなに素敵な作品に出会ったのは久しぶりでした。ありがとうございました。次回作があるのならとても楽しみです。 (2017年4月8日 22時) (
レス) id: 85932e2b1a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：youun | 作成日時：2017年3月23日 22時
