02. 彼の秘密 ページ2
｢え？そうだっけ？｣
天使は少し驚いた顔をしながら答えた。
しまった。
気づいてるのは私だけで
彼は私のことなんて気づいてなかったんだ。
｢そ、そうだよ！
私のふたつ前で降りるから覚えてたの
でもジョンハンくんって電車じゃないの？
あそこって知り合いのお家？｣
少し悲しいと思ってしまった自分を隠すように
質問を重ねた。
｢ああ、あそこバイト先
あと名前、呼び捨てでいいよ｣
天使がふっと笑いかける。
へえ、天使もバイトするんだ。
｢あのお屋敷ってお店なんだ？
ずっと家かと思ってた｣
｢家だよ、金持ちの家
おれさ、あの家の人に買われてるんだよね｣
まるで普通のことのように発された
買われている、という言葉を
私はすぐには理解できなかった。
｢いわゆる売春、てきな
あ、これふたりの秘密ね｣
天使は衝撃的な言葉をさらりと言い放つと
｢じゃ、おれもう帰るわ
後はよろしくね｣
と言って、かたまった私を置いて
図書室から出ていった。
広い図書室にひとり、
彼の大きな秘密を知った私。
買われている、という言葉を発したときの
彼の笑顔が頭から離れない。
天使の笑顔。
悲しそうな、笑顔。
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桜田 - とても美しく儚いお話で途中切ない気持ちになりました。上手く伝えられないのですが、こんなに素敵な作品に出会ったのは久しぶりでした。ありがとうございました。次回作があるのならとても楽しみです。 (2017年4月8日 22時) (
レス) id: 85932e2b1a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：youun | 作成日時：2017年3月23日 22時
