【文豪ストレイドッグス】元.ポートマフィアの指導者 Part 4

漆拾弍頁─小柄ナ襲撃者 4─ ページ19

｢賢治！｣

｢はーい｣




そう云えば賢治君の異能は未だ見たことがない。

この前は国木田さんと一緒に出て行っていたし、戦闘系の能力者なのかな。

物理攻撃じゃなかったら中也さんともいい感じに戦えそう。


...なんて私の考えを賢治君が壊したのはそれから間もないことだった。

私は思わず自分の目がついにおかしくなってしまったのかと思った。

賢治君はその細い腕で、地面に打ち込んであった軌条(レール)を軽々と持ち上げたのだから。

おまけにその表情は笑顔ときた。




｢気をつけて下さーい！｣




賢治君は持ち上げたそれを中也さんめがけて振りかぶる。

かなり勢いがあるが彼なら大丈夫だろう。

ポケットに手を入れ、近くにあった段差に腰掛け観戦を続ける。

案の定それは人に当たった様子はなく、大きな音と衝撃で壊れた細かな破片が舞うだけだった。




｢おおー｣




攻撃を避けられ驚く賢治君。

こういうのは思っても顔には出してはいけないのに。

中也さん相手なら尚更。


彼って動体視力が物凄く善いんだよね。

嘘を吐くのは下手だけど。


壁に刺さった軌条を上手く利用し、中也さんはお返しと云わんばかりに賢治君に蹴りを一発お見舞いした。

賢治君の躰は勢いよく壁に打ちつけられる。

寸前に防御していたし、何より異能を使っていない蹴りならば骨も折れていないだろう。

彼は怪力と頑丈さが売りのようだから。




｢！｣




与謝野先生が背後から鉈で攻撃をしかけるが軽々と避けられてしまう。

私も何もしていない訳じゃあないけれど、やる気が出ないのだよね。

偶に集中力を切れさすくらいでいいかと。


与謝野先生の攻撃を見事に避けた彼はと云えば、華麗に天井(・・)に着地していた。


天井に着地。

その事実に皆が目を見開く。




｢その異能...“重力遣い”の中原中也だね｣




与謝野先生は更に警戒心を強めた。


彼女が中也さんのこと知っているということは...喋ったな、あの人。

中也さんのことならまだしも私のことは喋ってないよね。

信用していないわけでは無いけど何か不安だ。




｢ち...太宰の兵六玉が喋ったか｣

｢おや？何故太宰が喋ったと思ったんだい？｣




一難去ってまた一難。

...なんてこと云い出すんだ、この人は。

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