【文豪ストレイドッグス】元.ポートマフィアの指導者 Part 4

陸拾壱頁─心配 2─ ページ8

『国木田さんたち遅いですね。何かあったのでしょうか』




書物から顔を上げる。

あれから数十分経ったものの、国木田さんは未だ探偵社に帰ってきていなかった。

向かった先が此処からどれほど離れているかを知らないので何とも云えないが、これはおかしいのではないだろうか。

失敗してしまったにしろ、彼の性格上連絡一つすら無いことが不気味に思う。




「確かに遅いね...一度電話してみるよ。Aは万が一に備えて与謝野先生を呼んできて。医務室に居る筈だから｣

『了解しました』




元部下に指示を出されるってなんだか新鮮だ。

まぁ昔も何度かあったから珍しくはないけど。


そんなことを頭に浮かべながら医務室へと足を進める。

...与謝野先生か。

そう云えば彼女にはまだ会ったことがない。

しかしその存在は前々から知っており、近いうちに会ってみたいとは思っていた。

治癒の異能力者なんて貴重だから。

あの時、私の異能が治癒だったらと何度考えたことか。




『与謝野先生、太宰さんが呼んで────』




呼んでますよ、と云おうとしたがその先が続かない。

ノックはしなくても良いだろうと軽い気持ちだったのが駄目だった。


医務室のドアを開けた私はあまりにも衝撃的なものを見てしまった。

与謝野先生だと思われる女性の手には大きな鉈。

医者と云えば手術刃(メス)、という私の概念を壊した瞬間だった。

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