弐拾玖頁─濁ッタ人生 3─ ページ36
『その虚勢は認めてあげる。でもその躰じゃ逆効果だってことくらい判るよね?あと人の動きは見るだけで理解できるほど単純じゃない』
警官が犯人を取り押さえるような制圧方法。
上から見下ろす彼女の表情は影で暗く窺えない。
顔を床に押し付けられる中、太宰は小さく肩を震わせる。
それが笑いから来ているものだと察し、Aは力を強め覗き見えた顔を顰めた。
「......ねぇ、Aさん。貴女の生きる理由って何?」
静かで落ち着いており、それでいて歪みのない真っ直ぐな問いかけ。
彼が心の底から求めるその答え。
締め付ける手が僅かに緩んだのを彼は確かに感じた。
「悪いけど少し調べさせてもらったよ。覚悟はしていたけど、首領に聞かなければその殆どが不透明なのが痛手だった。...此処に連れてこられた以前の記憶が無いんだってね。自身の生い立ちは勿論、両親の顔すら覚えていないだなんて」
太宰の語りにAは口を挟まず終始無言でいた。
彼女の表情が見えずとも、掴まれている手首から伝わる小さな変化を読み取る。
演技などでは再現不可能な自然な揺らぎ。
だからこそ彼は期待した。
このまま流れ導けば、望んだ答えが聞けると。
「ねぇ、だから教えてよ。何故君は今生きてるの」
彼女の掴んだ手が完全に緩む。
その感覚と静けさに太宰の頬も同じようになりかける。
二人の間を漂った沈黙はそう長くはなかった。
『嫌だ』
「.........え?」
その沈黙を破ったのは勿論Aだ。
しかしその破り方が太宰の思い描いていたものとは真反対であった。
思わず動かせる範囲で彼女を見上げようとするその姿にAは感嘆し、想像以上だと手を打った。
『その顔が駄賃ね。これからもご贔屓に』
軽やかな笑みで太宰の上から身を退ける。
いずれ聞かれると判りきっていたそれに特段驚きはしない。
あるとすれば、それは彼女が予想していたよりも早かったことだろうか。
偶には自分らしくもない、こんなしんみりとした雰囲気を纏うのも一興だろう。
彼等との付き合いは死ぬまで続く。
彼女は首領の命令とは関係無く、何となく直感的にそう感じた。
『私は生きてなんかいない。死んでるも同然だ』
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煉華☆(プロフ) - ラズベリーさん» 返信遅れてしまいすみませんでした!先ほど承認を出させていただきました。双黒良いですよね、私も最推しです(*^^*) 最終更新からかなり日が空いてしまいましたが、今日から再開予定ですのでまた読んでいただけると幸いです。コメントありがとうございました! (2019年9月27日 8時) (レス) id: fa2422e9a4 (このIDを非表示/違反報告)
煉華☆(プロフ) - 燐華さん» 返信遅れてしまい申し訳ありません。わざわざ申請してもらったのにこう言うのはなんなのですが、文章をしっかりと読んだ上での申請をお願いしております。フレンド数の上限の関係でこうなってしまって本当にすみません!拒否はしてませんので良ければお待ちしております (2019年9月27日 7時) (レス) id: fa2422e9a4 (このIDを非表示/違反報告)
ラズベリー(プロフ) - フレンド申請させていただきました。〈ラズベリー〉です!推しは旧双黒の2人です!このお話凄く面白いのでこれからも更新頑張って下さい! (2019年9月18日 16時) (レス) id: 56fb91a534 (このIDを非表示/違反報告)
燐華(プロフ) - フレンド申請させていただきました。ユーザー名は彼岸花です。 (2019年9月18日 9時) (レス) id: 7838562921 (このIDを非表示/違反報告)
煉華☆(プロフ) - サナさん» いただければ幸いです。 (2019年7月5日 15時) (レス) id: fa2422e9a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:煉華 | 作成日時:2016年12月19日 15時