【文豪ストレイドッグス】ポートマフィアの指導者

拾伍頁─黒ニ交ワレバ 8─ ページ20

｢太宰、手前は彼奴(アイツ)のことどう思った？｣




Aに与えられた作戦会議という名の二分間。

二十秒ほど経ち初めて発せられたのは中也のその言葉だった。

それを聞き、太宰は遠ざかっていくAから視線を移す。




｢どうって僕らへの接し方のこと？それなら彼女のやり方は妥当だと思うけど｣

｢それもだが彼奴の纏ってる雰囲気というか、何か手前に似てて善い気がしねぇンだよ｣

｢成程。中也が先刻(さっき)から苛ついてる原因の一つがそれね。そんなのこの組織に────ましてや指導者の立場の人間なら普通だと思うけどなぁ。逆に一目見て、“私は人殺しなんて出来ません”ていう雰囲気の方が違和感ありすぎて怖いんだけど｣




二人の間に流れる空気は最悪とまでは行かないものの、これから一緒に闘うという状況の前には確実に善くないものだった。

中也は見るからに不機嫌で、太宰もそれを受け感情が揺らいでいる。

しかしながら負けず嫌いなところは二人の珍しい共通点であり、二人ともこの勝負に負ける気はこれっぽっちも無かった。




｢それより何か良さげな案とかないの？今はそのための時間なんだけど｣

「どうせ云ったところで、手前は俺が提案する案なんか端から採用する気ねェだろうが｣

｢そりゃそうだけどさ、一応作戦会議をしろって云われたから聞くだけ聞いとこうと思って。後から何か云われるのも面倒だし｣




即答だった。

云って判っていながらも、中也はその返しに更に苛つきが増していく。

歯が食い縛られ、眉間に皺がよる。


そうこうしているうちにも時間は絶えず時を刻み、時計に表示された数字は一分を切っていた。




「手前には他人を気遣うとかそういうことが出来ねェのかよ」

「出来るに決まってるじゃないか。僕は女性には勿論、老人にも少年にも優しいよ。だから中也は特別だね」




笑顔を共に発せられた特別という言葉。

普通なら多少なりともプラスの感情が生まれる筈なのだが、云われた本人はそれとは真反対の感情を抱き怒りを通り越して云い返す気力を失った。

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