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鬼がゆっくりと近づいてくる。
俺はその場に突っ立ったまま動かなかった
「はっ、恐怖で動けねぇのか!」
鬼の後ろの女は「早くこの場から離れろよ」と言う目付きで見てくる。
そうだな、俺がここから逃げなきゃお前も身を隠せる時間がねぇからな。

『…』
俺は小さくため息をついた。
何で最終選別に来てまで嫌な感じにならなきゃいけねぇんだよ、ふざけんなよこのクソアマ。

俺の中で、この女と誰かが重なった
誰か、なんてすぐにわかる。
だから今その時の気分が蘇って、嫌な感じなんだ
…まだ俺が路地裏で暮らしていた時、同じくゴミのように暮らしていた、俺以下のゴミ達に重なるんだ。

「じゃあなクソガキ」
目の前に来ていた鬼は、余裕ぶっこいて俺にニタリと笑う
そしてその大きな腕を横に振るい、俺の頭を掴もうとした。
『…』
俺はその場で身を屈めると腕を交わす。
振るわれた腕は空を斬り、俺の刀によって切断された。

「…なっ」
鬼の懐へ潜り込むと刀は吸い込まれるように鬼の首へ向かって行く。
『蛍の呼吸、壱の型___』
((ザシュッ

鬼の背を蹴って着地。
刀を鞘に収めるのと、首が落ちたのは同時だった



『…』
鬼に背を向けて、女の方へ近づく
鬼が最後に何か口を開いたけど、そんなん別にどーでもいいわ。
俺が視線を向ければ女がビクリと体を強ばらせた。
俺が殺せると思わなかったのだろう、今になって先程の自身の言葉を後悔している様子だった。

「…あ、えっと…さっきは、ありが……ひっ」
ヘラリとした笑顔で俺を見上げた女。
……だが
俺の表情を見た途端、小さく悲鳴を上げて震え出す。
俺の顔から笑顔は消えていた。

…今後鬼殺隊として会うのなら、俺は笑顔で接しようと思った。
人に好かれるため、後々面倒な事にならないために。
…だけど
コイツはもう"鬼殺隊になれない"
だったら笑顔じゃなくても別に良い。

まず…女が鬼殺隊になれる、というのは俺が今日の夜明けまで女を鬼から守ってやった場合の事だ。
女一人では足が折れているため動けない。
出血も多いから鬼は寄ってくるだろう
そもそもの話、俺が居なければこの女は明日まで生きてられない。

俺はさっきまで良い奴だった
恩を売るためとは言え助けてやろうとした……にも関わらず。
この女は俺を身代わりにしようとした。
この俺に対してだ。信じられない。ふざけるな

『…』
つまり俺はもう女を助けてやる気が全くない
こんなゴミを助ける理由がない。



(12/24 呼吸の名前変更しました)
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まどろみ(プロフ) - 藍季さん» 応援ありがとうございます!更には型の名前まで...感謝しかないです!ぜひ次の主人公の戦闘シーンで使わせて頂きます! (2020年3月14日 20時) (レス) id: ec3dea80f5 (このIDを非表示/違反報告)
藍季 - ありきたりで、意味を見ると微妙な感じですが、よかったらどうぞ。ご参考までに。(なんか偉そうですみません。長文失礼しました) (2020年3月14日 14時) (レス) id: 74027efe9c (このIDを非表示/違反報告)
藍季 - あと、蛍の呼吸の型の名前なのですが「蛍火」なんてどうでしょうか。煉獄さんの継子的存在なら火や炎を表す言葉も組み合わせた方がいいかと考え、思いつきました。 (2020年3月14日 14時) (レス) id: 74027efe9c (このIDを非表示/違反報告)
藍季 - 初コメ失礼します。とても好みな小説です。獪岳も江戸っ子口調も大好きなので嬉しいです。これからも気楽に更新頑張ってください。応援しています!  (2020年3月14日 14時) (レス) id: 74027efe9c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まどろみ | 作成日時:2019年12月15日 0時

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