133話 ページ42
『…だって時透さん、どうせ忘れるからって…自ら避けてるんじゃないですか』
ポツリと本音が出たら、彼ははたと足を止める。
「…事実でしょ。どんなに良い思い出も忘れてしまう。アンタに僕の気持ちはわからない」
突き放すように、いつになく冷たい声色で言われる。
今度は視線すら向けて貰えなかった。
そしてさっきより早歩きで進み出す。
その後ろに続いた私は「やらかした」っていう思いと同時に、「これだけは言いたい」という気持ちがあった。
自分でも凄いお節介な奴だと思う。
でも彼の考え方はあまりにも悲しいから…
『でも!そうやって決めつけて諦めるのは良くない…と思います。無理にとは言わない、でも私の前では、やりたい事全部言ってくださいよ…』
「…だから」
『忘れたっていいんです。私が覚えてますから!』
すると、また彼は足を止めた。
体は前に向けたまま。私と彼の距離が少し近くなる
『忘れてもいいです。次会った時、この前時透さんが笑ってくれた事もう一度繰り返しますから。会う度に毎回でもいいです、きっとたくさん繰り返したら…どこか少しは時透さんの中に残ってくれるはずです。』
彼が会う度に私を忘れていてもまた私は自己紹介から始める。
何回も繰り返せば、きっとどこか既視感があって…それで覚えていけるかもしれない。
『覚えてる事を増やしていけば…自分の事、周りの人の事を知っていけます。私めげませんよ』
初めから諦めるなんて辛いじゃないか。
人と話す度、忘れる事前提に接するなんて悲しいじゃないか。
「…どうしてそんな事するの?それじゃアンタは何も楽しくないじゃないか、どうして無理に話しかけようとするの?」
今度は暗い声色だった。
でも純粋に疑問だったのだろう、確かに私と彼はほとんど接点がなく親しくもない。
不思議でもおかしくないか
『……私は人との出会いを大切にしたい。"一期一会"という言葉がありますが、正しくその通りだと思います。』
いつ死ぬかわからない。
この日常はずっと続くように思ってしまうけど実はいつ壊れてもおかしくないんだ。
『忘れるからどうでも良いなんて…いやそもそもこの世に、どうでも良い事なんてないですよ。どんな些細な事もきっと誰かにとっては大切な事…大切な時間です』
巡り巡って、私達の選んだ選択肢は誰かしらの重要なキーポイントになっている。
小さな事で人生はいくらでも変わり得る。
『時透さんとの時間ももちろん大切にしたい。後悔のないように…』
.
315人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
サワーポメロ(プロフ) - モブサイコ100知ってます!面白いですよね! (2020年4月23日 12時) (レス) id: 2fd1d8b796 (このIDを非表示/違反報告)
まどろみ(プロフ) - ふうさん» アオイちゃんが自分を腰抜けだと言っていたのは、過去に嫌なモブ隊士に言われちゃったりしたのかなぁと思って書きました。でもたぶん実際居ますよね、嫌な奴のは。作中で炭治郎くんが関わらなかっただけで、、、。もう私も本来なら目ん玉抉りたいレベルですよ!! (2019年11月9日 10時) (レス) id: ec3dea80f5 (このIDを非表示/違反報告)
まどろみ(プロフ) - ケチャップさん» けっこうな歳なのにヤンチャで凶器振り回す所、それが鋼塚さんの好きなポイントです笑 (2019年11月9日 10時) (レス) id: ec3dea80f5 (このIDを非表示/違反報告)
ふう(プロフ) - モブ隊士のくせにっアオイちゃん達いなかったら体力落ちてるくせにっどうせ今頃お陀仏のくせにっアオイちゃんを悪くいうなぁ!!目ん玉抉るぞぉ!!すいません冗談です許してください (2019年11月8日 18時) (レス) id: 0f2e7dcacf (このIDを非表示/違反報告)
ケチャップ - 鋼塚さん怖い…w (2019年11月2日 15時) (レス) id: 7bf493a5f5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まどろみ | 作成日時:2019年10月14日 14時