接近 ページ2
パワーポイントを垂れ流しするだけのつまらない講義が終わり私は早々と席を立つ。以前まではゆっくりと机の上を片付けてのろのろと移動をしていた私だったが、彼…白兎くんの影響で私まですぐに移動する癖がついてしまった。
ワイヤレスイヤホンを耳に埋めて周りの音が聞こえるか聞こえないかの音量で今流行りのK-POPを流しながら廊下を歩く。
行く先は私のお気に入りの場所。太陽の光が殆ど届かず人通りも少ない廊下に寂しく設置されたベンチ。
近くの自動販売機には眠気覚ましに丁度いいホットコーヒーが売られている。
人が多いところが苦手な私にとって次の講義が始まるまでの唯一心を休ませられるこの時間が私は好きだった。
少し仮眠でも取るか？そう思ったとき、少し遠くの曲がり角から彼がこちらへ向かってくるのが見えた。
意味も分からずに少し胸が高鳴る。いやかなり。
ベンチの上でぐだぁとだらしなく壁に体を預ける私を見つけた彼は申し訳なさそうに早歩きで自動販売機にお金を入れる。なんだ、飲み物を買いにきたのか。
そそくさとその場から離れようとすると彼を目で追い、目を瞑りかけたその時…後に見なければ良かったと後悔するものを私は運悪く見つけてしまった。
『なんで860円もお釣り置いていくのさ…』
大量の小銭を握り締め彼の向かった先に走る。
ばかばかばか。折角の休み時間なのに！
『すみません、あの！』
『ちょ、待って…っ白兎さん！』
「？…はい？」
『自動販売機で…お釣り忘れていきましたよ。』
「あ、！すみません、ありがとうございます…！」
『いえ…あ、どうぞ。では。』
緊張した…緊張した！会話できた！！
……会話なのか？
［今後の目標］自己紹介をする
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作者名：blue | 作成日時：2021年8月15日 20時
