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えべたんの手が止まり思わず顔を上げる。
｢……やばあ、ほんとに？ほんとに、なんかもう、やばい｣
えべたんはぼろぼろ涙を流してて、それでも動画越しに見てたあの可愛い笑顔で、私を見ていた。
それがなんだかとても綺麗に思えて、また泣けてくる。
｢あのね、えべたんも、山が好きだよ。えべたんも山を通して仲間ができたし、色んな事を覚えたんだ。それが、伝わってて、うれしいの。｣
えへへ、と笑う。多分えべたんは私より何個も年上なのに、それがあどけない少女みたいで胸がぎゅっとなった。
えべたんが生きてて、色んなものを見た。そんなえべたんを通して、私も色々なことを見て、知って。
立ち上がって、えべたんに手を差し伸べる。
第一の目標が達成できた喜びと、その次の大きな目標への好奇心で胸の奥がフツフツと熱く湧く。
｢わたし、えべたんのお陰で山が大好きだよ。だから、この山をのぼりたい。視聴者としてじゃなくて、1人の登山家として。｣
出来るところまで、なんて生ぬるいことは言わない。目指すのは頂き、ただ一つ。
私の手をえべたんはしっかりと握る。
その目は私を見ている。もちろん、1人の登山家、そして、仲間として。
｢うん、えべたんがレクチャーしてあげる。この山で1人も欠けさせない。えべたんが、アタシが、みんなを連れてってあげる。｣
ね！コージー！とえべたんが後ろをむくと、そこにはさっきの外国人。
｢コージーがね、教えてくれたの。日本人の女の子がいるからえべたんが助けてあげなって！｣
｢そう、だったんだ……｣
外国人……コージーさんの方を見る。しかめっ面なのに優しそうな目で私とえべたんを見ていて、軽く会釈をすると今度はゆっくりと、私でもわかるように話してくれた。
｢この山は、生半可な気持ちで登るものじゃない。死を覚悟して登るんだ。オマエにはその覚悟があるのかだけ聞いておきたい。｣
｢……あります。私は、この山の頂きを見たい。｣
えべたんとコージーさんが顔を見合わせて笑う。
そうして私に向き合った。
｢俺はコージー・オスコー。これからこの山に登る仲間だ。お前の名前は？｣
｢私の、名前は＿｣
雪原の世界に3人の登山家が並ぶ。
1人は山の中に仲間の影を。1人はその山への後悔と切望を。
そして1人は、ただその頂きを見据えていた。
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相田(プロフ) - 本当に素敵な作品をありがとうございました、そしてお疲れ様でした！ログアウト後もどうかご自愛ください。楓様の作品が本当に好きです、改めてありがとうございました！ (2021年7月17日 1時) (
レス) id: 2ca09c2594 (このIDを非表示/違反報告)
楓(プロフ) - 相田さん» コメント頂きありがとうございます。アカウントの方は完結後ログアウトとなりますが、もし機会があればまたどこかで…！ (2021年6月30日 2時) (レス) id: bb94798393 (このIDを非表示/違反報告)
相田(プロフ) - 日々の支えであった楓様の作品を拝めなくなると思うととても寂しく思いますが、アカウントを消された後もどうかお元気で...！ (2021年6月30日 2時) (レス) id: 2ca09c2594 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：楓 | 作成日時：2021年3月25日 11時
