お腹いっぱいの愛も / sgr ページ25
液晶越しの幸せなカップルに心臓を潰された気がして、潰された気がして、思わずテレビを消した。幸せに満ち足りていた頃が懐かしくなって、甘酸っぱさが物恋しくなるなんて。
今ある幸せに満足できない自分が嫌なのか、察して欲しくてむしゃくしゃしてるのか、いまいち自分でもよくわかんないけど。
「あれ、消したん？」
「……つまんなくってさ」
ぺたぺたと不思議そうな顔で隣に座ったすぎるにぶっきらぼうに返すと、すぎるはすぎるでへぇ、なんて興味なさげに返すから、また私の心はキュッとなった。
あのころは毎日ドキドキしてたのに、今は全然ときめかないんだよ、ねえ、すぎる、本当に私は。
雲がかった気持ちから零れかけた言葉は、すぎるの不意の行動によって遮られた。
「え、ちょ、A手ぇ冷たない？」
「え……そう？」
「まじで冷たいやん。言ってや〜！！も〜！！」
ぷりぷりそう言いながら私の手を握るすぎるの手はあったかくて優しかった。
なんでもないその温もりにどうしようもなく泣きそうになって、愛おしさが溢れる。
ごめんなぁ、と眉を下げたすぎるに手を握り返すと、今度はニッコリと太陽みたいな笑みを浮かべた。
「…ね、甘ずっぱいってどういう味なんだろ」
「甘ずっぱ…？わからへんわ、そんなん俺。」
でもな、と続ける。
こころなしかソワソワするような、楽しそうな、そんな表情を浮かべて。
「さっきな、Aの家来る前にええとこ見つけてな、アップルパイ買ってきてん！焼きたてのやつ！」
どうや！と言わんばかりの得意げな顔。甘ずっぱい＝でアップルパイなんてよくわかんない。けど、そんな自信満々な顔のすぎるを見ていたら心の陰りが晴れたような気がして、思わず笑ってしまった。
「でもそれ、冷めちゃってるんじゃない？」
「えっ、……ﾊｧｯ！！うわああごめんA〜！！」
「ぷっ……あはは！ううん、いいよ。一緒に食べよっか」
「せ、やねん！これがええねんな、大丈夫、美味しいはずやから。」
せかせかと私の手を離さないで歩くすぎるの背に、今度はじんわりとした気持ちになる。
甘酸っぱさが無いとしても、きっと、この気持ちは大事なものだと。
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相田(プロフ) - 本当に素敵な作品をありがとうございました、そしてお疲れ様でした！ログアウト後もどうかご自愛ください。楓様の作品が本当に好きです、改めてありがとうございました！ (2021年7月17日 1時) (
レス) id: 2ca09c2594 (このIDを非表示/違反報告)
楓(プロフ) - 相田さん» コメント頂きありがとうございます。アカウントの方は完結後ログアウトとなりますが、もし機会があればまたどこかで…！ (2021年6月30日 2時) (レス) id: bb94798393 (このIDを非表示/違反報告)
相田(プロフ) - 日々の支えであった楓様の作品を拝めなくなると思うととても寂しく思いますが、アカウントを消された後もどうかお元気で...！ (2021年6月30日 2時) (レス) id: 2ca09c2594 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：楓 | 作成日時：2021年3月25日 11時
