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「……あのね、あの、話さなくちゃいけないことがあって。」
心臓がはねた。それこそ、そのまま飛び出るんじゃないかってくらい。ザワザワと耳の奥で音が鳴る。カバンを持った手には汗がにじみでていた。
「私、好きな人が出来たの。だから、もう一緒に帰ったり、遊んだり出来ないなって。あ、あのね、嫌いになったとかじゃないの。ほんとよ？」
鼓動が早まるのと同時に呼吸が浅くなる。隣に立つAは、俺を気にかけながらたどたどしく言葉を繋いでいる。
「…私、蘭たんに甘えてばかりだったから、ちゃんと蘭たん以外の人と向き合おうと思って。だから、」
「うる、さい」
詰まっていた喉から暴れるみたいに声が漏れた。
聞きたくない。やめて欲しい。Aが俺を、拒絶しないで欲しい。ただのワガママ、幼馴染という立場に甘えて、こんなの良くないけど。
「……蘭たん、ごめんね。」
Aは、俺を見ようとはしない。悲しみの籠った瞳にまた喉が詰まった。違う、違うんだ。嫌わないで、欲しいだけだ。ネガティブな方向に考えてしまう俺が悪い、Aが悪い事なんて、今まで無かったんだ。
いつも、肝心な言葉が話せない。そんな自分がずっと嫌いだった。
俺を見て。ちゃんと話そう、謝りたい、なんで、どうして。ごちゃごちゃと混ざる頭。
遮断棒が上がり、歩きだそうとするAの腕をつかもうと手を伸ばした
「蘭たん、」
伸ばした手は空を切った。Aが、いなくなっている。いや、厳密には、ソレだったものがある。
上がったはずの遮断棒は、下がっている。
訳が、分からない。現実味のなさに、頭が痛む。
意識が、歪む。
＿＿＿＿
＿
「ちょっと蘭たん、大丈夫？。」
目を、開ける。Aが心配そうな顔で俺を見ていた。嫌な夢を見たのか汗をかいていた。嫌な汗だ、ため息をつくと、隣に座るAに手を引かれた。次で最寄りだったらしい。
駅のホームを降り、田舎道を歩き出す。何も無い平和な道、遮蔽物など影になるものもないため汗がダラダラと止まらない。
踏切で立ち止まると、見慣れたはずの風景に気味悪さを感じて、なんだか居心地が悪かった。
カンカンカンと耳障りな音がする。アスファルトに敷かれた踏切の遮断棒は、上がる気配はない。
忙しなくなく蝉が、隣で笑うAと俺を嘲笑ってるみたいで嫌だった。
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相田(プロフ) - 本当に素敵な作品をありがとうございました、そしてお疲れ様でした！ログアウト後もどうかご自愛ください。楓様の作品が本当に好きです、改めてありがとうございました！ (2021年7月17日 1時) (
レス) id: 2ca09c2594 (このIDを非表示/違反報告)
楓(プロフ) - 相田さん» コメント頂きありがとうございます。アカウントの方は完結後ログアウトとなりますが、もし機会があればまたどこかで…！ (2021年6月30日 2時) (レス) id: bb94798393 (このIDを非表示/違反報告)
相田(プロフ) - 日々の支えであった楓様の作品を拝めなくなると思うととても寂しく思いますが、アカウントを消された後もどうかお元気で...！ (2021年6月30日 2時) (レス) id: 2ca09c2594 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：楓 | 作成日時：2021年3月25日 11時
