𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟷𝟹𝟻 ページ36
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「……!?」
自然と聞こえた解錠の音に、ピタリと洋服を漁る手が止まる。もちろん、閉めていたはずの鍵が開いたからである。
そして"邪魔するぜ"とドカドカと侵入してきたのは、聞き馴染みのある声だった。
な、なんでこんな急に……!
深みのあるバリトンと乱雑な足音に心拍が上がる。それと同時に、"あっ、そういえば合鍵を勝手に作られていたな"と思い出した。色々とツッコミたいところはあったけど、今の私の頭はそこまで回らなくて。
だって、そうこうしているうちにすぐ目の前に陣がいたのだから。
「あっ……これは、その!なんていうか……」
しどろもどろになりながら言い訳を考える。
どうしよう、パーティーに行くっていうべきか。それともそういう気分だったとでもいうべきか。私が頭を捻っている間も、下から上にかけて舐めるように目の前の深碧が動く。
そしてこの時ふと気づいた。今日は彼だけじゃなく1人多いと。彼に隠れるように立つサングラスをかけたあの人は確か……
ウォッカさん、だったかしら……?
でもなんでここに?と首を傾げる。彼が連れてきたのはわかるけれど。
私がその疑問について考えるのを止めたのは、"悪くねぇ"という声が降り注いだ時だった。
「……馬子にも衣装、藁人形も衣装柄とはよくいったもんだが、まさにそれだな」
見下ろすように眺める彼は、クツクツと喉奥で笑っていた。褒められているのかそうじゃないのか。失礼なことを言われてるのはわかったけれど。
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年12月9日 22時