𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟷𝟸𝟶 ページ21
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「……ちょっと悪ぃ、電話だ」
服部に断りを入れて携帯を手に取る。
黒い液晶画面に浮かび上がったのは《赤井さん》の文字。
赤井さんから……?どうしたんだ、急に
最近やり取りをしていないだけあって、何か大事でもあったんじゃないかと心配になる。すこし波打つ心臓を抑えながら、オレは通話ボタンをタップした。
「もしもし、赤井さん?」
『……ああ、久しぶりだな。ボウヤ』
何時ぶりかに聞こえた赤井さんの声は、オレの不安に反して比較的落ちついたものだった。それでも、"どうかしたの?"とオレが聞くといつもより用心深く、そして慎重そうな声が。
『最近、組織の内部がどうも騒がしいらしい』
組織、だと……!?
波打っていた心拍がさらに早く加速する。
今まで組織関連の頼みの綱だった玲奈さんを急遽抜けさせてから、しばらく組織については情報が入ってこなかった。そんな今、組織について知れる経路は断たれているはず。まさか玲奈さんが再潜入したというわけでもないだろう。
「組織が……!ねぇ、それってどこの情報なの?」
『キールを脱退させた直後に忍ばせたFBIの諜報員からだ。……まぁ、残念ながら彼はまだ幹部にも満たない構成員。あまり詳しいことはわからんがな』
電話口から漏れる声は口惜しそうだが、玲奈さんを抜けさせたあとにすぐ諜報員を組織に潜入させられたとは。さすがは赤井さん……いや、FBIだ。
『ただ、組織がいつも以上に活動を活発させている。何か大きなことが起こる可能性は十分だ』
「うん……わかった。気をつけるよ」
"ありがとう赤井さん"とお礼をしてオレは通話を切った。
今まで組織が関わった事件は大規模なものばかりだった。それこそ玲奈さんの件であったり、ついこの間の灰原の誘拐。今度はいったい何を企てているのやら。
真っ黒になった画面を無言で見つめていると、"組織か……"と隣で服部が呟いた。
「……オレは組織についてはよーわからんが、くれぐれも気ィつけろよ」
「ああ……わかってるさ」
オレが深く頷くと、服部はソファから立ち上がった。
「ほな、オレはここで帰らせてもらうわ」
これからどうすんだ、とオレが聞くと連続殺人犯に目星がつくまでは東京にいるんだと言う。ホテルでも借りながら様子を見るのだと。
服部は今後の流れをオレに話すと、"蘭ちゃんによろしく言うとってな〜"と言って去っていった。
.𝚂𝚒𝚍𝚎 𝙴𝚗𝚍
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年12月9日 22時