清純の追憶･前編《名探偵コナン》 (ページ47)

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𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟺𝟼 ページ47

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「………っ待ちなさい！」

私もその薄暗い路地に入ると、そこには男の姿はなかった。

どこ……！どこにいったの！？

私がしきりに周囲を見回すと、地面にいくつかの血痕が。
まるで道標のように血痕は続いて落ちており、これはナイフから滴り落ちた血の可能性がある。となると、この痕の先に男がいるというわけで。
私がそれを辿っていくと、とある建物の近くで血痕はなくなっていた。

この後ろにいるのね……

そう判断するなり、"そこを動かないで！"と私は勢いよく後ろにまわった。
そして、同時に驚きで目を見張った。

だって目の前の男──彼の腕には先ほどの女性がいたから。しかも、彼女の首元には鋭利なナイフの刃先が当てられている。
つまりこれは人質。

「そ、それ以上近づくな…！この女がどうなってもいいのか！」

そう叫ぶ男に、私も素早くホルスターから拳銃を抜き取り臨戦態勢をとった。
先輩はすぐに来ると言っていたけど、彼を待っている時間なんてない。待っていれば、この目の前にいる男は逃走するだろう。人質の女性も一緒に。

だったら、もう1つしか手はない。ナイフを持っている右手をうまく狙撃して、女性を解放させて身柄を確保するしか。
そうは決めたものの、拳銃を持つ手がふるふると震える。女性に当てず、男の手のみに的中させるのは至難の業だ。しかもその手のすぐ横には女性の顔がある。

大丈夫……私ならきっとできる！

緊迫した状況に、ふーっと息を落ち着かせる。

そして私は男の手に狙いを定め、迷いもなく引き金を引いた。キラリと首元に当てられた刃先が光ったのと、私が放った銃弾が男に命中したのは同時だった。

「グッ……グアァ………！」

カランカランと軽い音を立てて、ナイフが地面に投げ出される。男は右手を抑えて転げ回り呻き声をあげた。

肝心の女性はといえば……よかった、無事だ。成功したんだ。男の腕から解放された彼女は、目尻に涙を溜めて私に抱きついた。

「大丈夫ですか！」

「は、はい！私は何とも……ありがとうございます……！！」

女性にここから避難するように伝えると、私はのたうち回る男に近づいた。

「午後5時12分……人質強要罪であなたを現行犯逮捕します」

そして、男の左手にガチャリと手錠をかけた。