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確かに、自分はなんの能力も持たないどころか、一般的な人間よりも平均能力の低い人間であるため、何かしらの特技を持った人を見るとかっこいいと感じることは多々ある。
しかし、それを今、直接伝えるのは、初対面ということもあり、恥ずかしさが募る。
「え、と、すいません。」
私はそう言いながら俯き、少々刀也さんの後ろに隠れると、唯華さんはまたケラケラと楽しそうに笑い始めた。
「この子おもろいなぁ、剣持ぃ」
「あんまりいじめんなよ、美兎委員長から預かってんだよ、僕が。」
「剣持が子守りか〜」
唯華さんはニヤニヤしながら刀也さんを煽るように見る。
「おふたりは、仲がいいんですね」
ずっと敬語で話していた刀也さんが砕けた喋り方をしており、それが唯華さんとの仲の良さを物語っている。
そんな私の言葉に2人とも反応せず、刀也さんは照れたように「ほら、もう行きますよ」と歩き始める。
私は唯華さんに軽くお辞儀をすると前を早足で歩く刀也さんを小走りで追いかける。
「あ、そうや、剣持ぃ〜」
唯華さんは急いでいる刀也さんがわざと振り返るように少し声のトーンを下げて呼びかけた。
「なんなんだ、僕は忙しいんだ」
「なんでもええけど、ディスコード見といてなぁ」
少しだけ、2人の間に重たい空気が流れる。
それは本当に刹那で、次の瞬間には唯華さんが欠伸をしながら「また後でなぁ〜」と手を振りながら歩き出していた。
後で、刀也さんとなにか約束があるのだろうか。
「あぁ、そっか、今日依頼の日か…」
刀也さんが唯華さんの後ろ姿を見て、呟く。
「なにか、ご予定が…?」
私の言葉に刀也さんは反応せず、手持ちのスマートフォンで時間を確認していた。
「あと2時間…。すいません、少しだけ急いでも大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫ですよ…というか、大丈夫ですか?お忙しいようでしたら私は明日でも……」
先程よりも確実に早まった歩く速度に、私は申し訳ない気持ちになりながら言う。
刀也さんは余裕がなくなったような表情で「いや、委員長に任されているので」と笑うと聞こえないぐらいの声で「ほんと、人使い荒いんですよね」と呟いていた。
しばらく歩き、家の奥に隠すようにそびえ立つ大きな扉の前に止まる。
「本当は色々説明しながら来るべきだったんですけど」
刀也さんはそう言いながら扉の横に置いてあったローブを羽織る。
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WAJ - ゆめなさん» ありがとうございます!そう言っていただけると本当に力になります!これからも応援よろしくお願いします! (2021年2月25日 10時) (レス) id: fa85d0ee74 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめな(プロフ) - 好きです…!!毎日更新が楽しみです!! (2021年2月24日 23時) (レス) id: 9f72c6a150 (このIDを非表示/違反報告)
WAJ - 野生のきゅうりさん» 応援ありがとうございます!長編になる予感はしていますがもうオチまで考えているので最後まで主人公を導けるように頑張ります!よろしくお願いします! (2021年2月16日 9時) (レス) id: 59ac59be38 (このIDを非表示/違反報告)
野生のきゅうり(プロフ) - 好きな感じのやつです……!!!更新頑張ってくださいー!続きが気になるヤツ久しぶりに見ました笑 (2021年2月16日 0時) (レス) id: 66eb00c237 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:WAJ | 作成日時:2021年2月7日 1時