三社鼎立 7 ページ28
「―――答えよポートマフィアの特使」
その時、社長の凛とした声が地下に響く。
「貴兄らの提案は了知した。確かに探偵社が組合の精鋭を挫けば、貴兄らは労せずして敵の力を殺げる。三社鼎立の現状なれば、あわよくば探偵社と組合の共倒れを狙う策も筋が通る」
「だが、お宅にも損はない だろ?」
「この話が本当にそれだけならばな」
中原中也は黙ったままだ。私たちもこのやりとりに口出しはできない。
「探偵社が目先の獲物に喜んで噛み付く野良犬でも思うのか?敵に情報を与え操るは高等戦術だ。このような木理の粗い策で我等を操れると考えるなら―――マフィアなど戦争する価値も無い」
「……敵の頭目から直々に挑発を賜るとは、光栄だな」
やれやれといった様子で茶化す中原中也。私はそんな彼のことを心の中で茶化すな、と罵倒した。続けて社長は中原中也に質問する。
「…この件でマフィアはどう動く?」
「【動くまでもねえ】よ」
「成る程……そう云う事か」
中原中也がそう答えると、
「やあ素敵帽子君、組合の御機嫌二人組に情報を渡したのは君かい?」
「あ?………そうだが」
『素敵帽子』という呼称にふきだしそうになるのをこらえた。確かにセンスはいいと思うが、素敵帽子というとちょっと面白い。
彼はしばしの沈黙の後、少し嬉しそうな顔をし、肯定した。
「組合は僕達と同じように罠を疑った筈だ。しかし彼等は食いついた。余りに『餌』が魅力的だったからだ」
組合が食いつく餌。思考を巡らすが思い付かない。私たちが組合と同じ立場だったら、何だったら有利になるだろう。そんなもの、敵の仲間だったら―――…。
そこまで考えて、はっと気がつく。真逆。乱歩さんの言葉に嫌な予感がした。
「―――何で組合を釣った?」
「真逆…!!」
「そこの女の想像通りだと思うぜ。『餌』はお宅らの事務員だ」
「事務員を『餌』にしただと!?」
「直ぐに避難すりゃ間に合う。その上組合はお宅等が動く事を知らねえ。楽勝だ」
「……乱歩。奴の言葉に嘘は有るか」
「無いね、残念乍ながら。こう云う時は、真実がいちばん効く」
私の予想があたってしまった。乱歩さんが嘘ではないというので真実なのだろう。
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塩わさび - ミヤさん» コメントありがとうございます!おもしろいといっていただけるなんて光栄です…!!!頑張って更新していきたいと思います……! (2018年4月18日 23時) (レス) id: e627b6cc05 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤ - 続編おめでとうございます!人間創造、とっても面白いです!これからも頑張ってください。応援しています! (2018年4月17日 21時) (レス) id: ce29b99b88 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:塩わさび | 作成日時:2018年4月16日 21時