三社鼎立 8 ページ29
「つまりアンタらは、事務員の居場所を探り出して組合に密告し、さらにそれを探偵社に密告。自分達は汗ひとつかかずに、二つの敵を穴に落としたって訳かい」
「穴だと判っていても、探偵社は落ちずにはいられねえ。首領の言葉だ」
「……至急事務員に避難指示を。それから――国木田に繋げ」
にやりと意地の悪い笑みを浮かべ、我々を挑発する。社長は国木田さんに繋げるように乱歩さんに指示する。そしてしばらくたつと、今度は私の名前を呼んだ。
「A!今から至急事務員と合流しろ。此処から行くにはAが一番はやい」
「はいっ!」
「そう簡単に行かせると思うかァ?」
社長からそう指示を承ると、中原中也は足を軽くあげ、勢いよく足を下ろした。どんっと凄まじい音が鳴り、地面にヒビが入る。脅しのつもりだろう。正直、怖い。けど、怖いなんていってられない。時間がないのだ。
その時、私の頭にある言葉が浮かんだ。太宰さんが言っていた、あの言葉が。
「――やってみなさいよ。やれるものなら」
「はっ!随分威勢がいい女だな!!」
「A!」
与謝野先生が私の名前を呼んだ。大丈夫だ、という意味をこめて二人に笑みをむけ、走り出す。そのまま中原中也の横を走り抜け……られるはずもなく。がしりと腕を捕まれた。どすん、と体に重みがくる。視界の端に余裕そうに笑う中原中也が見えた。しかし、そんなのは想定済みだ。
「なっ……!?」
「言いましたよね。やれるものなら、と」
以前芥川と戦った時と同じように反撃をした。その瞬間、体が軽くなり、逆に私を掴んでいた中原中也の体が地にふせた。掴まれた腕が離れる。私にかけたはずの重力操作が、自分に返ってきて驚いているのだ。その隙に私は再び走り出す。
もう中原中也は追いかけては来なかった。
―――鏡花ちゃん、一体どこにいるの?
何処かへ行ってしまった着物の少女のことを考えながら、創造したバイクを走らせる。あの時私が手をしっかり繋いでおけば。あの時私が鏡花ちゃんを追いかけていれば。そんな後悔がぐるぐると駆け巡る。
あの後、太宰さんは心配するなと私に言い聞かせた。太宰さんがいうなら、きっと大丈夫だ。
「―――Aちゃん!」
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塩わさび - ミヤさん» コメントありがとうございます!おもしろいといっていただけるなんて光栄です…!!!頑張って更新していきたいと思います……! (2018年4月18日 23時) (レス) id: e627b6cc05 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤ - 続編おめでとうございます!人間創造、とっても面白いです!これからも頑張ってください。応援しています! (2018年4月17日 21時) (レス) id: ce29b99b88 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:塩わさび | 作成日時:2018年4月16日 21時